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医療費控除は5年間遡れる 2015年分の漏れは年内に

知っ得・お金のトリセツ(30)

今年もあとわずか。冬のボーナスに期待できない時節柄、ちょっとでもお得になる話は見逃せない。例えば医療費控除。言葉は物々しいが要は病気やケガで出費がかさんだら、事情に鑑み国が税金をまけてくれる制度だ。対象はその年の1月1日~12月31日の支払い分まで。この時期になると歯などの「駆け込み年内治療」を促すマネー記事が増えるのはそのためだ。一方で意外に知られていないのが「時効」が5年であること。今このタイミングで真に駆け込むべきなのは5年前の医療費控除手続きだ。思い出してみよう。2015年に出産して費用がかさまなかったか? 体外受精を受けなかったか? インプラントはどうか? レーシックは? 12月末の期限切れの前にお得の種が見つかったらラッキーだ。

面倒な領収書の発掘も2017年以降は便利に

覚えがある場合、何はともあれ領収書の発掘に進もう。これがなくては始まらない。医療費控除は1年間に支払った医療費が10万円(総所得200万円以下の人は所得の5%)を超えると、「超過分×自分の所得税率」の額だけ税金が減額される仕組み。会社員の場合も年末調整では処理できず確定申告が必要だ。通常は1年間の給与と医療費が固まった年明け以降、還付申告をする流れだが、最新ではない過去分については1年間いつでも可能だ。

最大の難関がこの面倒な領収書整理だったわけだが、2017年以降分についてはグッと楽になっている。健保組合など自分が加入する公的医療保険が1年分などまとめて発行してくれる「医療費のお知らせ」で代用できるようになったのだ。

家族分を合算し高税率の人が申告

領収書は家族の分を合算できる。税法上の扶養の概念とはやや異なり、別居でも仕送りをしている子どもや親の分なども合算可能。特に高額の医療イベントがなくても例えば家族が5人なら1人あたり2万円と、日常生活であり得る額に近づく。

めでたく医療費の自己負担分の合計が10万円を超えたら、実際の作業をしたのが専業主婦のお母さんだとしても所得税率の一番高い人の名前で申告するのが定石。1回50万円になったりする高額な体外受精など不妊治療も医療費控除の対象だ。共働きでも流れで妻が自分で申告しがちだが、夫婦で税率を比較する一手間をかけよう。

仮に年収600万円で税率20%の人が1年で30万円の医療費を支払った場合、(30万円-10万円)×20%で4万円が返ってくる。さらに住民税(10%)分の2万円も安くなるが、これは翌年の税金額が減る形で反映される。

最近は「もう1つの医療費控除」もある

15年分はあと1カ月ちょっとで期限切れなので急ぐ必要があるが、それ以降の分は年が明けてから今年の医療費控除を申告する時にまとめて作業することもできる。その際、17年分以降はたとえ10万円のハードルを越えていなくても税金が戻ってくる可能性がまだ残っていることを覚えておこう。

これも意外に知られていないが「セルフメディケーション税制」という医療費控除の特例があるのだ。こちらのハードルは1万2000円。対象は「スイッチOTC」と呼ばれる医療成分が配合された市販薬だ。対象になる風邪薬や胃腸薬などをドラッグストアで仮に1年で5万円購入した場合、(5万円-1万2000円)×所得税率分だけ税還付を受けられる。20%なら7600円。多くはないが通常の医療費控除10万円に達しなくても救われる可能性があるわけだ。作業時間にもよるが仮に1時間で終わったとして時給7600円なら悪くはない。通常の医療費控除と併用はできず、健康診断や定期健診を受けているのが適用の条件だ。

年約760万人近い本家の医療費控除の利用に比べ認知度は低く、利用者はおよそ3万人にとどまるが、コロナ禍というご時世を考えると利用価値は小さくない。安易に医療機関を受診せず少々の不調は自ら薬を購入して服用、療養する流れはできつつある。実際、厚生労働省は年末の税制改正要望にセルフメディケーション制度の拡大を盛り込んでいる。現状、21年末までの時限措置だがこれをさらに5年延長し、1万2000円に満たない部分も控除の計算に参入できるようにする案だ。知っておいて損はない。

山本由里(やまもと・ゆり)

1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー編集センターのマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

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山本 由里

カバージャンル

  • マーケット
  • 企業業績
  • 資産運用

経歴

1993年入社のアラフィフ。キャッチフレーズは「1円単位の節約から兆円単位のマーケットまで」。証券部を軸足に日経ヴェリタスやテレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」、マネー報道部など一貫してお金周りの記事の執筆・編集・番組制作に携わってきました。ただ、多忙を口実にタクシーを多用するなど自分のお金管理は杜撰。人生100年時代を見据え、蓄えた知識を実践に落とし込んで成果を発信するのが今年の目標です。

現職はマネー編集センター マネー・エディター兼キャスター。

活動実績

                    
2020年12月18日 福岡日経懇話会で「100年ランの走り方 これからの資産管理術」講演
2020年12月15日~ 日経電子版ニュースをひとこと解説する「日経Think!」のエキスパート(投稿者)を担当
2020年11月30日 YouTube「NIKKEIマネーのまなび」チャンネル出演。社労士の井戸美枝氏と「将来もらえる年金を2000万円増やす方法」対談
2020年11月21日 日経ウーマノミクス・プロジェクトのオンラインセミナー「ジブン流資産形成、はじめませんか」登壇
2020年8月17~21日 日経CNBCの夏休み特別企画「天引きから始めよう」出演
2020年2月18日 日経CNBC「昼エクスプレス」スペシャルトーク出演
2020年2月7日 香川日経懇話会で「人生100年時代に備える資産形成」講演
2020年1月7日 日経CNBC「昼エクスプレス」スペシャルトーク出演
2019年4月~ 電子版有料会員向けニューズレター「NIKKEI Briefing」で執筆メンバーの1人として毎週水曜発信「Women’s Insights」を担当。最新作:人生100年 気になる2つの50%(2020年2月5日)
2019年4月~ BSテレ東「日経プラス10」に解説キャスターとして出演中
  共著に「資産運用大全」「定年ですよ」「これからの人生お金に困らない本」など

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