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本塁打王争った阪神・大山 「バース以来」に現実味

プロ4年目の今季に急成長し、自己最多の28本塁打をマークした大山=共同

プロ野球セ・リーグでライバル巨人に独走を許した今季の阪神。数少ない明るい話題は大卒プロ4年目、大山悠輔(25)の飛躍だった。巨人・岡本和真(24)と本塁打のタイトル争いを演じ、3本差で敗れたものの昨季から倍増の28本をマークした。1986年のランディ・バースを最後に遠ざかる阪神選手の本塁打王獲得は来季以降に持ち越しとなったが、近い将来、球団史に新たな栄誉を刻む可能性を感じさせた。

10月13日の中日戦(ナゴヤドーム)。大山は一回に26号を放ち、25本で並んでいた岡本を抜いて本塁打王争いの単独トップに立った。阪神の日本人選手としては84年の掛布雅之以来、36年ぶりとなるタイトルに近づいたかにみえた。

そこからしばらく音なしに。27号が出たのは11月4日のヤクルト戦(甲子園)。19試合ぶりの一発が飛び出すまで足踏みする間、再び岡本に抜かれてしまう。結局、タイトル獲得はならなかった。それでも昨季の14本が自己最高だった大山が急成長し、シーズン終盤まで本塁打王争いに絡んだことは近年の球団史においてエポックメイキングな出来事だったといえる。

本拠地・甲子園球場のラッキーゾーン撤去後の92年から、阪神の打者にとって本塁打王は縁遠いものとなった。両翼のフェンスまでの距離が延びたうえ、右翼から左翼方向へ強い浜風も吹く。浜風は右方向への飛球を押し戻し、とくに金本知憲に代表される歴代の左の強打者たちを苦しめてきた。

歴代10位の通算476本塁打を誇る金本は広島から阪神に移籍後、トレーニングに一層力を入れた。さらにパワーアップして「浜風とけんか」するためだ。それでも、本塁打王には手が届かなかった。

浜風は右打者の大山には追い風になることもあるが、右方向に流し打つ本塁打が至難となる。同じ右打者で広島時代に右方向への一発も量産し、2005年に本塁打王に輝いた新井貴浩が08年の阪神移籍後に本塁打数を減らしたのが象徴的。本塁打王になるには逆方向へもアーチをかけて本数を稼ぐことが必要だが、甲子園では難しい。

右打者の岡本が今季、甲子園では一本も本塁打を打っていないように、この球場は右打ち、左打ちに関係なく長距離打者泣かせなのである。こうした強打者たちの苦闘を踏まえると、今季の大山がみせたパフォーマンスは快挙といってもいい。

本塁打を放った大山(右)を迎える矢野監督(左)=共同

阪神の矢野燿大監督は「今季は狙い球ではないボールも反応で仕留めている。打てるポイントが去年よりも格段に増えた」と評する。本人も「フルスイングしながらもボールに食らいつけている」。当てにいくのではなく、どんな球種やコースにも崩されずにバットを振り切ることができるようになったのが飛躍の要因だろう。

28本の本塁打の中で、とくに強烈なインパクトを与えたのが9月29日の中日戦(甲子園)で放った22号だ。中堅手がジャンプすれば取れそうに見えたほどの低い弾道のライナーで中堅左に突き刺した。大山は「バットがボールに付いていくような、今までにない感覚があった」と新たな感触をつかんだ。この一発を機に、成長曲線はさらに上向きになった観がある。

浜中治、桜井広大、林威助……。近年の阪神の大砲候補と目された選手はそろって開花しきれなかった。現役でも17年に20本塁打を放った中谷将大が伸び悩む。大砲を育みにくい甲子園の環境で、来季以降も大山が順調に成長し続けるかは未知数な面もある。

ただ、矢野監督は「甲子園で本塁打王争いをしたことは自信になったと思う。来季は狙って(本塁打王を)取る立場になった」と話す。大山なら、生え抜きの大砲を育成できないという球団の苦悩を、そのパワーで吹き飛ばしてくれるかもしれない。

(田村城)

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