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「選択と集中」スピード重視 パナソニック岐路に

(更新)

パナソニックの新たな経営トップに常務執行役員の楠見雄規氏(55)が昇格する。現社長の津賀一宏氏(64)は、巨額赤字の元凶だったプラズマテレビ事業から撤退し経営危機を回避。電気自動車(EV)の電池など自動車部品を成長の柱に育てようとしたが低収益から抜け出せない。「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助氏が創設した巨大総合家電メーカーは岐路に立つ。

「最後の年に新型コロナウイルス(の感染拡大)とは思わなかった」。秋が近づく頃、津賀氏がこうつぶやいたことがある。パナソニックの21年3月期の純利益見通しは1000億円と前期比56%減を見込み、ソニーなど電機大手の中で苦戦が目立つ。集大成にするはずだった今期、有終の美を飾れなくなった。

12年6月に就任した津賀氏は価格競争が激しい家電などの消費者向けビジネスから、自動車や電子部品など企業向け(BtoB)事業へのシフトを進めてきた。米テスラと電池工場の共同運営も推進。16年3月期に掲げた戦略投資1兆円構想では、大半をEV電池など自動車部品に振り向ける計画を掲げた。

だが、成長のけん引役と期待した自動車関連ビジネスは20年3月期営業損益が466億円の赤字。米テスラ向け電池も収益貢献はこれからだ。皮肉にも直近の20年4~9月期連結営業利益は消費者向けが中心の家電事業が過半を稼いだ。

新社長に就任する楠見氏は13日の会見で、パナソニックの課題について「競合他社に比べてスピードで劣っている」と述べた。プラズマテレビ、太陽光パネル、中小型液晶パネルや半導体など赤字事業の処理が絶え間なく続いた。事業環境の変化に対応し切れず、「(赤字事業を消す)モグラたたき」(津賀氏)に追われ、成長分野の育成が遅れた。

津賀氏は楠見氏への置き土産として、22年4月に持ち株会社制への移行を決断した。中村邦夫元社長が解体した事業部制を復活させ、その上でカンパニー制を導入した津賀氏が「会社のかたち」として最後にいきついたのが持ち株会社だった。中途半端だった事業トップの権限と責任をより明確にさせる。スピード感を持って「選択と集中」を進めるのが持ち株会社制導入の最大の狙いだ。

家電やシステムキッチン、溶接機、5G基地局の部品などいまだ事業は多岐にわたる。楠見氏はBtoB強化を引き継ぐとみられるが、「低収益の事業があり、どうするのか考えないといけない」と語る。トップ就任早々、楠見氏は事業の取捨選択に取り組むことになりそうだ。

「一つ、二つ他社が追いつけないものを各事業が持てば、成長の核となれる」。会見で楠見氏がこう語気を強める場面があった。

エンジニア出身の楠見氏は技術開発に強い関心を持つとされる。構造改革に追われ、競争力のある「技術」は多くはない。最近は日本電産やライバルのソニーに移る人材もいる。優秀な人材をひき付けるためにも、革新的な技術やアイデアを全社的に生み出す風土作りが課題だ。

改革道半ばで津賀氏は退場する。パナソニックはこのまま老いるのか、再び輝きを取り戻すことができるのか。バトンを託された楠見氏にはパナソニックをどんな会社にするのかをまず明確に示すことが求められる。

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