ミャンマー、民主化進展見通せず 与党大勝

【ヤンゴン=新田裕一】8日投票のミャンマー総選挙(上下両院選)で13日、民主化指導者アウン・サン・スー・チー国家顧問(75)が率いる与党、国民民主連盟(NLD)の大勝が確実になった。国民の支持は底堅いが、民主化の進展は停滞している。
ミャンマーの選挙管理委員会によると、日本時間午後6時30分現在の確定議席はNLDが計384(上院135、下院249)で、過半数322を大きく超えた。全体の84%を占める。軍政の流れをくむ国軍系の最大野党、連邦団結発展党(USDP)は計28だった。
開票は続いているが、計390議席を得た2015年の前回総選挙に続く圧勝は間違いない。NLDの報道担当者は独自集計で「議席数は前回の総選挙を上回る見通しだ」と主張した。
ただスー・チー氏は事実上の政府トップとして、5年前の公約を実現できないままだ。武力衝突を続ける国軍と少数民族の和平と、国軍の政治参加を弱めるための憲法改正を掲げたが進展はみられない。
国軍は憲法の規定で上下両院のそれぞれ25%を非改選の軍人枠として確保し、国政に影響力を及ぼす。憲法改正には上下両院の全議員の75%を超える賛成が必要で、この仕組みを変えるのは難しい。NLDは軍の政治関与を低下させる憲法改正案を提出したが、3月に否決された。
有権者は軍事政権がいつでも復活できると考える。軍政への回帰を防ぐにはNLDへ投票するほかにないという有権者側の事情もあった。
軍政下で計15年間の自宅軟禁に耐えたスー・チー氏の人気は高いが、欧米諸国の視線は厳しい。17年8月に起きたミャンマー国軍によるイスラム系少数民族ロヒンギャへの迫害で、70万人以上が隣国バングラデシュに逃れ難民となった。
欧米の圧力を受け、スー・チー政権はロヒンギャのミャンマー帰還を認めたが進んでいない。ロヒンギャへの国籍付与にも消極的だ。欧米の人権団体からはスー・チー氏からノーベル平和賞を剥奪すべきだとの声もある。
近づいてくるのは中国だ。広域経済圏構想「一帯一路」のもとでインフラ整備などを軸にミャンマーへの投融資を積み上げる。スー・チー氏も「中国は最も大事なパートナーだ」と言明する。
中国にとっては、陸路でミャンマーを通じインド洋に抜けるルートは安全保障の面でも重要だ。日米が主導する「自由で開かれたインド太平洋」構想とぶつかりかねないリスクをはらむ。
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