NEWSの加藤シゲアキ 3年ぶりの小説刊行

アイドルグループ「NEWS」のメンバーで、作家としても活動する加藤シゲアキが、3年ぶりとなる小説「オルタネート」(新潮社)を出した。悩みや葛藤を抱えながら、好きなことに打ち込む高校生たちを主人公に据えたのは「感覚や景色を覚えているうちに」と考えたから。SNS(交流サイト)との関わり方や、そこで人気を博す男子高校生カップルといった現代に即した要素を加え、「恋愛群像劇」に挑戦した。
物語の軸は、高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」。トラウマがあって使わない蓉(いるる)、アプリを信奉する凪津(なづ)、高校を中退したため使えなくなった尚志(なおし)。「単なるSNSではなく、自分が求める人に出会えるアプリを描く」ことで、魅力と危うさ、それぞれに違う接し方を、持ち前の緻密な描写で表現した。
「SNS上では自由になれるが、それに縛られることもある」と考えている。「皆と一緒でないとという同調圧力と、人と違っていたい気持ちがぶつかり合う」。そんな「アンバランスさが同居する彼らの心情」を、自身の様々な内面と重ねた。
自らの高校時代は、授業が終わったら、そのまま仕事に向かう日々だった。小説で描いた高校生活は自身と重なるわけではないが、同級生の話についていくため「一生懸命話題のドラマを見て本を読んだ」経験は、執筆活動に生きている。「もう一つの高校生活を追体験するように、没入して書き切った」
芸能界の仕事との関係も「以前とは違い、全部同じ中にある感覚」だ。「経験が地層となり、書くことに肩の力が抜けてきたのかも」。移動時間などに小説の構想を練る習慣もすっかり身についた。「少し休むけど」と笑いながら「加藤の作品は次どう来るのだろうと思ってもらえるような、全然違うものを書けたら」と創作意欲は尽きない。
(光井友理)