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消えた鉄道・航空「移動」 ワーケーションが補う?

NIKKEI MJ

新型コロナウイルスの感染拡大で、大きく減った消費者行動の1つが移動だ。在宅に代表されるリモートワークが"市民権"を得たことに加え、感染リスクなどを考慮しての旅行自粛ムードは消費者心理に根強く残る。これまで出張や旅行での移動手段として使われてきた鉄道、航空はコロナ禍の逆風をもろに受けた。雲間すら見えない逆境で、どこに活路を見いだすか。各社が目をつけたのが「ワーケーション」だ。

JALはワーケーションなどに適した宿泊施設と航空券がセットになった旅行商品を提供する

「オフィスや自宅より快適な環境で仕事できた」。日本航空(JAL)が7月に立ち上げた、ワーケーションプランの旅行商品の案内サイト。実際に利用した消費者からの、満足げなコメントも見られた。

異なる環境で集中

在宅勤務は通勤時間が他のことに回せるという利点がある一方、通信環境などストレスがたまる要因も少なからずありそうだ。自宅が仕事をする環境にうまくマッチしなかったり、周りにいる家族の目や行動が気になったりもあるだろう。家にいるからとダラダラと仕事をしてしまい、いつの間にか深夜という経験をした人もいるかもしれない。

これが施設がそろったホテルならば、仕事をする環境も確保しやすい。いつもと違う環境でリフレッシュして仕事できる上、仕事を終えたら食事や観光での気晴らしもできるため、短時間で集中するモチベーションにもつながりそうだ。

「通常状態での旅行が行きにくくなった今、ワーケーションでなら移動需要をつかめるのでは」との想定で始めたJALのワーケーションプランだが、利用者数は提供開始以降右肩上がりだ。約1カ月の販売で、年度内(2020年10月~21年3月)の目標の3分の1を達成しているという。

JR西日本もワーケーションに活路を求める。定額移住サービスを提供するカブクスタイル(長崎市)とアドレス(東京・千代田)の会員を対象に、大阪と西日本の一部地区を通常の約半額で往復できる切符を9~11月に提供した。

岡山や白浜などと大阪市内とを月に2回往復でき、両社が各地区で提携する施設に宿泊できる。定員は3カ月合計で180人だったが、募集開始1カ月で定員オーバーとなった。同サービスを利用した神戸在住の40代女性は「白浜まで手ごろな値段で移動することができたし、普段あまり来られない場所なので新鮮な気持ちで過ごせた」と話す。

鉄道・航空会社によるワーケーションのプランは確かに広がっている。だがワーケーションが"市民権"を得るまでになっているかといえば疑問符がつく。

経験者わずか5%

シェアリングサービスなどを手がけるインフォリッチ(東京・渋谷)がテレワーク実施者1000人に行った10月の調査では、ワーケーションに「興味はあるが実施できていない」との回答の合計が全体の62%にのぼった。一方、ワーケーションを実際にしたことがあるのは全体のわずか5%。実施できない理由として最も多かったのは「お金がかかるから」だった。

テレワークの広がりで確かにどこでも仕事ができるようになった。だが日々の仕事を、一部とはいえワーケーションに切り替えるには、コストの問題は重くのしかかる。鉄道や航空各社が活路を見いだそうとするならば、より割安で手軽なプランの提案が求められるだろう。

(山下宗一郎)

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