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トランプ氏「時がたてば分かる」 米国の分断修復険しく

米大統領選 癒えぬ分断(1)

米ホワイトハウスから車で5分。米外交をつかさどる国務省には大統領選で民主党の前副大統領ジョー・バイデンが当選を確実にした7日以降、世界各国から祝意を伝えるメッセージが引きも切らない。ただ、米メディアによると数十にも積み上がるその祝電は次のホワイトハウスの主の手元にまだ届いていない。

「米国は(国際舞台の中心に)戻ってくる」。バイデンは14日までに約10を数える各国首脳らとの電話協議で繰り返しこう宣言してみせたが、通例なら経るはずの国務省の調整を介さなかった。

異例の形でスタートを切った「首脳外交」は共和党の現職、ドナルド・トランプが敗北を受け入れず、バイデンへの政権移行の協力を拒んでいるのが原因だ。

「米国の指導力を傷つけ、安全保障に計り知れない影響をもたらしかねない」。12日、150人を上回る超党派の元政府高官が、政権移行の手続きに早く着手するよう求める嘆願書を送った。宛先はそのカギを握る連邦政府一般調達局長のエミリー・マーフィーである。

法律に基づいて手続きを進めるには同局の認定が要る。ただ、2017年にトランプから任命されたマーフィーはバイデン勝利を認める書類への署名を拒む。バイデンにはこれまで勝者に認められてきた機密情報に関するブリーフィングが提供されず、機密情報に接する権限も与えられない異常事態が続く。

それでもバイデンは淡々と「次期大統領」への準備を進める。「心からお悔やみ申し上げる」。米軍人6人がエジプトで事故死した12日、米大統領が兼ねる米軍の最高司令官に就くことになる立場を意識し、ツイッターにこう書き込んだ。14日までの3日間、地元の東部デラウェア州南部にある別荘にこもって新政権の人事構想を練った。

10日、同州ウィルミントンのライブ会場。「率直に言って、恥ずべきことだ」。敗北を認めないトランプの態度を記者団から問われ、バイデンは不快感を隠さなかった。3日前の勝利演説では「互いに敵とみなすのはやめよう。米国の傷を癒やすときだ」と訴えたばかりだが、分断修復の険しさを物語る。

敗色濃厚となっているトランプはなお逆転を諦めず、強権発動も辞さない姿勢が政府機関を揺るがす。トランプが国防長官のマーク・エスパーを電撃的に解任してから一夜明けた10日。「彼女は素晴らしい仕事をやっている」。共和党の上院議員マルコ・ルビオは米中央情報局(CIA)長官のジーナ・ハスペルをこう擁護した。ハスペルもトランプの「粛清」の標的に浮かぶ。相次ぐ解任は政策の予見性を低下させ、世界を不安定にするリスクが高まる。

「『バイデン政権』の発足までに、アフガニスタンから米軍の撤退を完了させるのでは」「イスラエルがイランへの攻撃を仕掛ける」――。エスパーの解任後、ワシントンの安全保障問題のウオッチャーにはこんな噂が飛び交った。ルビオの発言はその懸念が党派を超えて共有されていることを物語る。

14日、首都ワシントン。「史上最高の大統領だ」。トランプ支持者のデモには数万人が集まり、ホワイトハウス近くから連邦議会へ続く目抜き通りを埋め尽くした。ゴルフ場に向かうトランプを乗せた車列が通りかかると「あと4年!」の歓声があがった。

支持者が声をあげても選挙結果が覆るとの見方はほとんどない。全州で勝者が判明してもなお「時がたてば分かる」と敗北を認めないトランプの狙いはなにか。

「なぜトランプは24年大統領選の最有力候補なのか」。米CNNは12日、こんな論評を出した。共和党支持層では9割超の支持を維持するトランプの求心力は、24年に向けた波乱要素になる。

トランプの元妻、イヴァナ・トランプは米メディアの取材にこう語る。「彼は負けるのが嫌いだ。だから彼はとことん戦い続けるだろう」。少なくとも21年1月20日正午までは世界最高の権力の座にとどまる人物の一挙手一投足を世界が注視している。

◇ 

大統領選は米国に深い分断の爪痕を残し、次期政権発足に向けても異例の展開をたどる。余波に揺れる関係者の動きを追う。(敬称略)

アメリカ大統領選挙

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