J1神戸・三浦監督、再建急ぐ イニエスタ頼み脱却へ
J1神戸が三浦淳寛新監督の体制で、11月後半に再開予定のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)に挑む。9月のトルステン・フィンク前監督の退任を受け、急きょ就任。アンドレス・イニエスタや酒井高徳、山口蛍らスター選手を擁しながらも失点続きで波に乗れないチームの立て直しへ、まずは守備意識の徹底を唱える。攻撃もイニエスタだけに頼らず、いかに引き出しを増やしていくかが新監督に課された命題だろう。

現役時代は横浜フリューゲルスや神戸などでMFとして活躍し、日本代表でもプレー経験のある三浦新監督。クラブの強化責任者であるスポーツダイレクター(SD)時代から掲げるのはボールを圧倒的に保持し、ほぼ相手陣内で攻め続けるバルセロナ型のスタイルだ。ただ、その理想は一度脇に置き、今は守備の再構築に全力を注ぐ。
「僕はしつこい性格」と、練習やミーティングではプレスへの意識を繰り返し説く。「あと2メートル動くだけで相手にプレッシャーになるとか、本当に細かい点を言っている」。当然の基本をJクラブ屈指のスターたちに改めて徹底させるのは苦労が伴いそうだが、「うまくいかないのは基礎がおろそかになっている証し。我々は基本に立ち返らないといけない」と語る。
MF安井拓也は「プレスでもう一歩寄せることにもっとこだわりたい。その意識がシュートを足にあててブロックしたり、クロスを上げさせなかったりにつながっていく」と監督の思いを代弁する。三浦監督の初采配だった9月26日の札幌戦から2試合連続無失点。その後は再び失点が目立つようになるなど守備力の底上げは一進一退で、もう少し時間がかかりそうだ。
攻撃面でも手腕が問われる。DF西大伍は「イニエスタからボールが出てくるだけのチームなら、相手も守りやすい」と指摘する。三浦監督就任後も大半の得点にイニエスタのパスが絡み、周囲もこの絶対的な主将に頼りがち。好機を多くつくるからついボールを預けたくなるのだろうが、攻めのバリエーションをより増やせば相手も的を絞りづらくなり、イニエスタをより生かすことにもつながる。
新型コロナウイルスの影響で中断していたACLの再開後初戦は25日の広州恒大(中国)戦。三浦監督は「私は負けることが大嫌いな性格で、(J1の)リーグ戦も大事」と前置きした上で、「監督に就いた時点でリーグ優勝は現実的ではなかった。ACLで勝ち、アジアのナンバーワンになりたい。そのためにも私のコンセプトの落とし込みを進めていく」と意気込んでいる。
(田村城)