ビール4社の10月販売、減税効果で8カ月ぶりプラスに

ビール大手4社が12日に発表した10月のビール販売量は、前年同月比2%増と8カ月ぶりに上昇に転じた。同月に始まったビール減税の効果で家庭向けが好調だった。増税となった第三のビールの販売は大きく減少したが、新型コロナウイルス下の節約志向の高まりで11月以降は回復する可能性が高い。
ビール販売量で前年実績割れを回避したのは増減率がゼロだった2月以来となる。
キリンビールのビール販売量は17%増えた。特に家庭用の缶ビールは6割増となった。アサヒビールなど他の3社も軒並み主力ブランドの缶商品が2~3割増えた。
新商品も販売回復につながった。キリンは業界初の糖質ゼロのビール「一番搾り 糖質ゼロ」を10月6日から販売。同月は1カ月の目標の2倍以上となる90万ケース(1ケースは633ミリリットル20本の大瓶換算)を販売した。

飲食店向けのビール販売も若干改善した。アサヒビールのビール販売の9割超を占める「スーパードライ」は飲食店向けが2割減と、9月の3割減からマイナス幅が縮小した。政府の観光業や飲食業支援「Go To」キャンペーンが後押ししたとみられる。
ビールが減税で350ミリリットル缶で7円値下げされたのに対し、約10円の値上げとなった第三のビールは2割減少した。増税前の9月にあった駆け込み需要の反動減の影響も受けた。
ただ新型コロナ下の節約志向で、依然ビールより割安な第三のビールの人気は底堅い。総務省の9月の家計調査によると、2人以上が住む1世帯あたりのビールの消費金額は969円と同8%減少した一方、発泡酒と第三のビールは1302円と32%増加。ビール大手幹部は「普段家で飲むのは第三、特別な日はビールと使い分ける傾向が強まっている」と話す。
11月以降は第三のビールの販売が回復しそうだ。全国小売店の販売データを集計する日経POS(販売時点情報管理)によると、キリンの第三のビール「本麒麟」の販売量は増税直前の9月28日の週から2週連続で前週比で減少したが、10月12日の週から増加に転じた。ビール系飲料の増減税の影響は年内で一巡するとの見方が強い。
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