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マリンバ、古楽で新境地(音楽評)

名倉誠人「バッハ・パラレルズ」

名倉は世界初演を含む委嘱作品と自身の編曲したバッハ作品とを並置して演奏した

神戸市出身でニューヨークを拠点に活動する名倉誠人のマリンバ・リサイタル。卓越した技巧、磨かれたセンス、達意のプログラムが一体となった濃密な時間を堪能した。(10月24日、神戸市の神戸新聞松方ホール)。

新作委嘱に力を入れ、マリンバの可能性を追求する名倉の企画力に敬服してきた。今回の「バッハ・パラレルズ」は、バッハのコラールと舞踏作品に焦点を当て、世界初演を含む委嘱作品と自身の編曲によるバッハ作品とを並置。現代に生きるバッハの真髄(しんずい)を鮮やかに浮かび上がらせた。

マリンバとオルガンは構造が似ている。吹子で空気を送る代りに木の振動がパイプに伝わり、オルガンのように森羅万象が響く。鍵盤楽器と打楽器の境界が消えて生命の泉が湧き上がる。4声に対応する4本のバチが混声合唱さながら溶け合い、清らかな気分で抱擁する。バッハのコラールはマリンバにふさわしい。

楽器を熟知した名倉のアレンジが冴(さ)える。駆け抜ける爽快なリズム。無伴奏チェロ組曲ハ短調のゆったりしたサラバンドでは、ヴィブラートを用いずにオクターヴの対位法を駆使し、マリンバ技法の新境地を開いた。

編曲したコラールと、フィリップ・ラサーが同曲から霊感を得て作曲した二重奏曲(小川佳津子)とを並置した6曲は絶品。「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」では、リズムと音形の遊びが際立ち、多声音楽のモダンな喜びに胸が熱くなった。

鈴木純明の委嘱作品「アナバシスの泉」は、バロックの類型音楽から奇想曲へと変容する。常に真っ芯を捉えた音のつながりと間の取り方が絶妙だ。コーダの高揚のままコラール「われ満ちたれり」へ。その心情の深さが神の愛そのものだった。

(音楽評論家 藤野一夫)

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