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神奈川・横須賀―北九州のフェリー 港湾事業者ら反発

潜望展望

予定地は自動車の輸出拠点として使われている(神奈川県横須賀市)

北九州市へのフェリー航路が2021年7月に開設される予定の神奈川県横須賀市で、市と港湾事業者らの間で波風が立っている。港は自動車輸出に使われてきたが、フェリーターミナルの建設などで荷さばき地の一部が使用できなくなるためだ。両者の対立は裁判に発展している。

横須賀市役所からほど近い横須賀新港(約4.2ヘクタール)。SUBARU(スバル)の新車が並び、同社の輸出拠点などに使われている。フェリーを運航するSHKライングループが9月、新港の一角にターミナルを着工。新門司港(北九州市)への定期航路の準備作業が本格的に始まった。

フェリーは週6便運航する。横須賀を午後11時45分に出発して新門司港には翌日の午後9時に到着し、逆方向も発着地を入れ替えほぼ同じ時間帯のダイヤとなる。速度制限(時速約22キロ)のある東京湾の湾口に近い横須賀発着のため、東京から北九州を結ぶ「オーシャン東九」(34時間程度)に比べて約13時間早く着く。

市の期待は大きい。18年の誘致表明時、上地克明市長は「海洋都市に近づく大きな一歩」と強調。陸路で行き止まりの三浦半島が海路で外部とつながり、新たな人やモノの流れが生まれる。「夕方に集荷し、3日目の午前に配達できる。運転手不足に悩む物流業者の利用が期待できる」(市企業誘致・工業振興課)。大手宅配便など業界の関心も高いという。

フェリーターミナルの建設予定地(神奈川県横須賀市)

一方、港湾関係者には戸惑いが広がっている。ポートセールスで市と連携してきた横須賀港運協会では「市から知らされたのは市長の誘致表明の前日だ」(鈴木稔会長)と不満を募らせる。周辺道路の渋滞などを懸念する近隣マンション住民も市に反発している。

これまで新港では大半のエリアが自動車の輸出等に使われてきた。だが、フェリー就航後は半分が輸出業務の専用エリアとなり、残る半分のおよそ2分の1がフェリー関係地、2分の1はフェリーと輸出業務の共用地のような扱いとなる。フェリーが入港しない際は輸出用の車を置いておけるが、入港すると移動させる必要がある。

新港で自動車輸出業務を手掛ける相模運輸倉庫(横須賀市)の社長も務める鈴木氏は、乗客ら不特定多数の人が埠頭内に入るため保安面のリスクもあると指摘。「荷主サイドが敬遠する恐れもある。新港ではフェリーと共存できない」と強調する。10月にはターミナル建設で使用できなくなった荷さばき地の使用許可を求め、市側を相手取って提訴に踏み切った。

人口減少が急速に進む横須賀市はフェリーの就航について「産業集積や誘致につながる」と必要性を強調する。一方、港運協会の鈴木氏は「我々の雇用や住民を犠牲にし、どれほど市の財政がプラスになるのか」と疑問を投げかける。期待と反発が渦巻く事業を進めるには、横須賀市がフェリーの就航効果や弊害を明らかにしたうえで、交渉や協議を尽くす姿勢が欠かせない。

(牛山知也)

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