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弾む走り、可能性は無限大 パラ陸上・大島健吾(下)

小さい頃から義足でスポーツに打ち込み「障害を抱えているという意識はない」と話す

小学校でサッカーと水泳、中学校は卓球。そして高校ではラグビーに熱中した。「障害を抱えているという意識を持ったことは一度もなくて」。大島健吾は生活用の義足をはめて幼少期から活発に走り回った。

体を動かすことが好きだったし、義足であることを不自由だと感じたこともなかった。鼻が高い低いとか、あるいは目が大きい小さいとか。「足があるかないかということを、僕はそんな感じで捉えている」

サッカーをすれば、義足を装着した大島の硬い左足は"武器"に変貌する。蹴ったボールには回転がかかりやすく、シュートは強烈だった。「周りからは『ちょっとずるいよ』って言われた」と笑う。

ラグビーでは力勝負のスクラムにも参加するフランカーを持ち場とした。今でこそ日本トップクラスのパラ短距離ランナーだが、当時は「そこまで足が速くなくて。タックルとかのコンタクトプレーが好きだった」。さすがに体重を左足にかけて踏ん張るのは難しかったが、「体全体でガチッと固めて支えるイメージ」で対応してみせた。

自分の左足は一つの個性。人と違うことを嘆くのではなく、義足だからこその楽しみ方を見つけたり、工夫によってできることの幅を広げていったり。

義足であることを理由に自らの限界を決めたことはなく、「健常者」「障害者」というカテゴリーにもとらわれない。そうやって道を切り開いてきたという自負があるから、「僕以上に動ける義足の人はいない」と胸を張る。

陸上を始めてから、競技用義足の体験授業で全国各地の小学校を回る活動に参加している。感じるのは「義足を『かわいそう』とか『大変そう』と思っている子供が多い」こと。幼少期から義足とともにあった自らの体験を語り、弾むような走りを間近で披露する。「マイナスだったイメージが『義足って格好いい』となってくれれば」と願う。

例えば、モータースポーツはマシンの進化と人間の操舵(そうだ)能力が掛け合わさって極限の勝負が繰り広げられる世界。「同じように、義足も無限の可能性を秘めているはず」

憧れるのは両足義足で五輪出場を果たしたオスカー・ピストリウス(南アフリカ)や、走り幅跳びで健常者の世界記録に迫るマルクス・レーム(ドイツ)。鍛錬されたパラアスリートと進化する道具の融合で記録はどこまで伸びるのか。100メートルという最もシンプルな戦いを持ち場とする大島は、その醍醐味を存分に味わえるはずだ。=敬称略

(木村慧)

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