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北陸新幹線、大阪延伸前倒しに暗雲 敦賀開業延期報告

2023年春を予定している北陸新幹線の金沢―敦賀間の延伸開業が遅れる見通しとなった。北陸新幹線を巡っては、関西・北陸の経済界などが大阪までの全線開業を国の想定する46年から10年以上前倒しすることを要望してきた。しかし敦賀までの開業がずれ込むことで実現のハードルはより高くなった。

11日の与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)の会合で、鉄道建設・運輸施設整備支援機構から報告があった。敦賀延伸が約1年半遅れるとの見通しが示され、石川・福井県境の加賀トンネルでの追加工事などで工事費用は約2880億円の上積みが必要との試算も明らかになった。与党PTのメンバーからは批判が相次ぎ、細田博之座長は「今回の報告は了承できない」と述べ、国土交通省から12月上旬までに中間報告を求める考えを示した。

JR西日本も11日、「全体工程がこのような状況になったことに対し、驚いているとともに非常に残念。遅れを少しでも短縮できるよう、ご努力いただきたい」とコメントした。

敦賀以西の延伸ルートを巡っては福井県小浜市付近から南下して京都府に入り、東海道新幹線の南側を迂回して新大阪駅につなぐ大まかなルートが決まり、環境影響評価(アセスメント)に着手している。京都府内では南丹市の原生林が残る「芦生の森」を回避したり、豊富な地下水のある伏見酒造エリアを外したりする案が示されている。

ただ、肝心の着工に向けては、従来の整備新幹線の枠組みでは北海道新幹線の札幌延伸が実現する30年度末まで新路線の財源はない。国交省は46年完成(31年着工、建設期間15年)を想定しており、敦賀止まりが20年以上続くことになる。

このため、関西経済連合会は北陸経済連合会、大阪商工会議所とともに、大阪延伸を札幌延伸と同時期の30年度に前倒しする場合の経済波及効果を約4.3兆円と試算し、早期の開業を求めた。11日も、「全線開業のスケジュールが後ずれしかねず予定通りの開業を求めたい」「仮に敦賀開業が遅れても変わらず早期の全線開業を求めていく」などの声が挙がった。

背景には、大阪延伸がずれ込めばずれ込むほど、北陸が関東圏に取り込まれるとの危機感がある。アジア太平洋研究所の18年の調査でも、富山、石川県の高校生が関東の大学を志望する傾向が強まっているという。

北陸新幹線が全線開業すれば、東京と大阪を結ぶ大動脈となる新幹線ルートが複線化され、防災上の利点も大きい。東京―金沢―京都―大阪を結ぶ観光の新たなゴールデンルートも魅力的だ。財源の検討を含め、どう議論を盛り上げていくかがカギになる。

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