首相と連合会長が初会談 「最低賃金上げ」機に関係構築
菅義偉首相は11日、首相官邸で連合の神津里季生(りきお)会長と15分間会談した。神津氏は新型コロナウイルス対策を巡り、労働者の雇用や賃金の維持が重要との認識を示した。最低賃金の引き上げなど、連合が求める政策の実現へ官邸とのパイプづくりを目指す。

菅政権発足後、政労トップが会うのは初めてだ。神津氏は「雇用の問題や賃上げ、生産性向上で、政労使が力を合わせるのが不可欠だ」と伝えた。首相は「基本的には認識は一緒だ」と述べたという。神津氏が会談後、記者団に語った。

連合内ではコロナ禍で、雇用や生活対策の強化といった課題への要求が高まっている。最低賃金の引き上げに意欲をみせる首相との関係構築を急ぐ。
連合は次期衆院選で立憲民主党や国民民主党を支援する方針を示しながら、政策面で政府を頼らざるを得ないジレンマを抱える。
「自民党に代わる選択肢が必要」と主張するものの、立民、国民民主両党とも支持率は伸び悩み、連合の主張を体現する力を持てずにいる。
労働組合の求心力にも影響する。厚生労働省によると、雇用者数に占める組合員数の割合を示す推定組織率は2000年の21.5%から、19年は16.7%に下がった。
連合傘下の民間労組からは自民党を支持する意見も出る。安倍政権は経済界に賃上げを促し、0.8倍程度だった有効求人倍率も1倍を上回った。
民間労組幹部は「与党との関係を強めた方が実利がある」と指摘する。神津氏は「政策などを巡る要望は立民や国民民主以外にもこれまで通りやっていく」との立場だ。9日夜には自民党の二階俊博幹事長と食事をともにした。
自民党にとっても1年以内にある次期衆院選を前に、連合との距離を縮めれば野党を揺さぶれる。
民間労組は立民が共産党と選挙協力を進めることに不満を持つ。電機連合や電力総連の組織内議員は立民との合流を拒み、国民民主に加わった。自動車総連の組織内議員は無所属で活動する。
政府と連合との関係を占う試金石は政策要望の場である「政労会見」を復活させるかどうかだ。神津氏は11日の会談でも再開を求めた。
1989年に官民労組が大同団結し、連合を結成した。翌年に当時の海部俊樹首相と山岸章連合会長が会談し、労働界の代表として首相と会う慣例になった。
12年の第2次安倍政権発足後は、連合が旧民主党政権を支えていたのを受け、政労会見を開いてこなかった。16年からは政労会見の形ではなく、非公式に連合と話し合う姿勢に転じた。