ブロックチェーン企業、金融市場のインフラを変革
資本市場のインフラは株式、債券などの有価証券の売買を支え、莫大な額の取引を処理している。資金の流れを円滑化する「金融の配管」サービスが集まるこの大規模な市場は、ブロックチェーン改革に身構えている。
現状では、複雑なプロセスで規制順守と安全で信頼できる取引が確保されている。このやり方は多くの仲介者が必要なため非効率的で、マネーロンダリング(資金洗浄)などの不正行為を引き起こす可能性があるとの指摘もある。
そこで現状を変え、よりシンプルで合理化した取引確認手段を提供するために分散型台帳技術(DLT)を採用する企業が増えている。こうした先駆的な企業はDLTを活用して証券の所有権を証明する「資産のトークン化」や決済サービス、コンプライアンスの解決策などを生み出すことで、資本市場の透明性を高めて合理化しようとしている。
金融当局もDLTの役割拡大を認める姿勢を示しており、普及が進む可能性がある。欧州連合(EU)や中国など主要国・地域の公的機関は資本市場でのDLT活用を評価する実証実験に相次いで乗り出している。
今回のリポートではオランダのDLT調査会社ブロックデータとCBインサイツの市場情報プラットフォームを活用し、DLTを資本市場に応用している企業を抜き出した。

この市場マップは主に未上場の存続企業で構成している。他社に買収されたが引き続き独立したサービスを提供している企業は分析の対象に含めた。カテゴリーは重複している場合もあり、企業は主な用途に応じて配置している。
カテゴリーの内訳
・発行市場:現物資産のトークン化に力を入れている企業や、トークン化された資産により資金調達の円滑化を目指す企業が含まれる。米セキュリタイズ(Securitize)、スイスのマウントペレリン(Mt. Pelerin)、米ポリマス(Polymath)などが主なプロジェクトを手掛けている。
・流通市場:投資家がトークン化された証券を取引できるブロックチェーンを活用した取引所が含まれる。従来の証券取引所もDLTを活用した取引所の構築に乗り出しており、こうした企業に攻勢を仕掛けている。ビットフィネックス(Bitfinex)など大手の暗号資産(仮想通貨)取引所も証券分野に手を広げつつある。
・エンドツーエンドのプラットフォーム:資産のトークン化や発行、保管など資産のライフサイクル全体に及ぶサービスを提供している企業。米ティーゼロ(tZero)は資産のトークン化と発行に加え、証券を取引する流通市場のプラットフォームも運営している。英ニボーラ(Nivaura)なども同様のサービスを手掛ける。
・支払い:支払い通貨やステーブルコイン(価値をドルなどの法定通貨に固定化している仮想通貨)、DLTを使った資本市場の枠組み内で取引できる即時グロス決済(RTGS)システムなどのテクノロジーの開発に取り組んでいる企業。米サークル(Circle)の「USDコイン(USDC)」、米リップルの「リップル(XRP)」、米ジェミニの「ジェミニドル(GUSD)」などがある。
・ポストトレード:取引完了後の決済などでDLTを活用したサービスを提供している企業。一例は保管や支払い、清算・決済サービスを提供する米パクソス(Paxos)だ。
・サービス:DLTを活用して取引を確認・追跡して本人確認(KYC)やアンチマネーロンダリング(AML)、コンプライアンスなどのサービスを提供する企業。米ソリダス・ラブズ(Solidus Labs)や英ビロン(Billon)などがある。
・インフラ:様々な資本市場向け解決策の枠組みや基盤となるDLTシステムを提供する企業。ポストトレードに特化したDLTシステムを手掛ける企業(例:米アクソニ、Axoni)が多いが、DLTの推進コミュニティー「ハイパーレッジャー(Hyperledger)」などの基盤システムは資本市場以外でも活用できる。