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G1・8勝のアーモンドアイ、史上初でも歴代4位?

天皇賞・秋で優勝したアーモンドアイ(右)。G1レース8勝目を挙げた=共同

3週続いた中央競馬の「大記録シリーズ」は、11月1日の天皇賞・秋(東京・G1)で大団円を迎えた。まず10月18日、秋華賞(京都・G1)でデアリングタクトが史上初めて、無敗での3歳牝馬三冠を達成。続く10月25日、コントレイルが菊花賞(京都・G1)で父ディープインパクト以来15年ぶり史上3頭目の無敗の三冠(3歳三冠は9年ぶり8頭目)をなし遂げた。トリを務めたのがアーモンドアイ(牝5)で、天皇賞・秋で史上初の国内外8つ目のG1タイトルを手にした。

過去にG1を7つ勝った馬はアーモンドアイ以前に6頭。うち5頭は中央のG1だけを勝っており、ジェンティルドンナは中央の6勝に加え、アラブ首長国連邦(UAE)のG1、ドバイ・シーマクラシックを制した。アーモンドアイは今年5月のヴィクトリアマイルで7勝目(うちUAEで1勝)。安田記念ではグランアレグリアに完敗の2着だったが、2度目の挑戦で大記録を達成した。

「芝G1で8勝」と芝がついた理由は

ところで、多くのメディアが今回の記録を「芝G1で8勝」と表記した。「芝」がついた理由を探ると、グレード(競走の格付け)管理の甘さが浮かび上がる。地方競馬で施行される中央交流重賞(ダートグレード)のほとんどは、国際基準を満たしていないが、お目こぼし的にグレードに準ずる地位を与えられ、メディアも追認。国際格付けのある重賞と交ぜて数えるため、ダート路線では、名だたる名馬の記録を上回る馬が3頭もいる。

地方で施行されるダートグレード競走は40あり、うち最高格付けのレースは10。だが、10競走中、外国馬が出走可能で、レーティング(RT=各馬の能力を斤量の形で数値化した値)で算定する基準を満たした国際G1競走は、年末の東京大賞典(大井)しかない。2歳限定の全日本2歳優駿(川崎)も、米国のケンタッキーダービーのステップ競走に指定され、外国馬に門戸を開いているが、レーティングが基準に届かないため、国際格付けはなく、「Jpn1」と表記される。

残る8競走は外国馬が出走できないJpn1。10競走中、古馬の1600~2100メートル戦は7つで、中央の古馬の芝中長距離G1の年6戦より多い。しかも、中央馬の出走枠が少なく競争相手が厳しくないため、タイトルを重ねやすい。ダート路線は新陳代謝も遅めで、タイトルの多い馬が続出する。

2015年のフェブラリーSで連覇を達成したコパノリッキー。地方のタイトルを合わせて「G1・11勝」と表記されることも=JRA提供

Jpn1をG1とみなすと、アーモンドアイを上回る馬は3頭もいる。最多は11勝のコパノリッキーで、2014~17年にかしわ記念(船橋)で3勝したほか、各地で持ち回り開催されるJBCクラシック、南部杯(盛岡)でも連覇を果たした。一方、国際格付けのあるレースは4、5歳時に中央のフェブラリーステークス(東京)を連覇し、7歳の17年にラストランの東京大賞典を優勝。Jpn1を含めれば11勝の大記録だが、国際G1競走は3勝だ。

続くのが10勝のホッコータルマエ。こちらは16年までに39戦を走り、Jpn1を7勝した一方、国際格付けがあるレースは14年のチャンピオンズカップ(中京)と、13、14年の東京大賞典で計3勝を挙げた。力の衰えが感じられた7歳時の16年も相手に恵まれて優勝するなど、川崎記念を14年から3連覇している。

タイトル9つを取ったのはヴァーミリアン。2歳時に芝のG3も勝っているが、3歳だった05年秋に初ダートのオープン特別を勝つと路線転換した。初タイトルは07年の川崎記念で、全盛期の5~6歳時にJBCクラシック、ジャパンカップダート、東京大賞典、フェブラリーステークスと4連勝。その後はJBCクラシックで08、09年と勝利を重ねて3連覇した。最後のタイトルが7歳時の川崎記念だった点はホッコータルマエと同じだが、国際格付けのあるG1は中央の2勝のみだ。07年に東京大賞典を勝ったものの、同レースの国際G1指定はその後の11年だった。

大井と川崎は、既に国際競走を行っており、川崎記念や帝王賞は国際格付けを申請できる状況にあるが、申請時に問題になるのがファイナルレート(FR)だ。FRは各競走の1~4着に入った馬の年末段階でのRTを平均して算出する。川崎記念の場合、昨年のFRが111.75で、G1の基準となる115(牝馬限定、2歳は110。2歳牝馬限定は105)に遠く及ばない。帝王賞は上半期のダート路線の総決算という意味があり、メンバーの質は川崎記念より高いが、昨年のFRは114.25だった。

地方施行レース、G1の基準に届かず

東京大賞典を含めて、昨年の地方施行のG1、Jpn1で、FRがG1の基準となる115に届いたレースは皆無。基準に達しないレースが「Jpn1=G1のようなもの」と扱われ、メディアも受け入れることで、アーモンドアイの偉業を形の上では上回る馬が量産されるのだ。そのため、「正規G1」7勝の壁が破られた今、G1の前に「芝」をつけて区別せざるを得なくなったのである。

11月3日に大井で行われたJBC競走のうち、「スプリント」(ダート1200メートル)では、浦和で開催された前年の2着馬で、藤田菜七子騎乗のコパノキッキング(5歳去勢馬)が参戦。「女性騎手初のG1制覇」がかかる一戦として扱われた。結果は6着だったが、もし勝っていたら、同レースをG1として扱うことの是非が問題になるところだった。昨年の同レースのFRは106.75で、G2の基準にも遠く及ばない。今年は上位の顔ぶれから少し上がりそうだが、G1に程遠いのは同じだ。

11月3日のJBCスプリントを制したサブノジュニア(左)=共同

中央の重賞は厳格なグレード管理をしており、16年には牝馬限定G3のターコイズステークスが、グレード除外の危機に陥った。同年のレースがFR106(牝馬の斤量が2キロ軽いため実質110)と、G2並みの数値が出て難を逃れた。だが、地方のダートグレードでは、実力上位の中央馬の出走枠が限られ、レース中盤に中央勢のはるか後ろを地方馬がバラバラで走っているような場面が珍しくない。

こうした現状に目をつぶり、甘いグレード管理を放置すれば、スポーツの基本となる記録の価値を損ねることになる。ダート戦の格付けは「ダート競走振興会議」で審議されており、毎年のように意見が出され、海外からも指摘があるというが、改善の兆しが見えないのが現実だ。「日本ではG1だが対外的にはグレードがない」。こんな二重性は恥と心得るべきである。

(野元賢一)

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