米台、新たな経済対話 20日にワシントンで開催
【台北=中村裕】米国政府は10日、台湾と新たに創設する経済対話を、20日にワシントンで開催すると発表した。米中対立が続くなか、米台が高速通信規格「5G」や半導体などハイテク分野で一段と連携を深め、強固な安全保障につなげるのが狙い。中国は強く反発している。
米側は、9月に訪台したクラック国務次官(経済成長・エネルギー・環境担当)らが出席する。台湾側からは、経済部(経済省)の陳正祺・政務次官を筆頭にした代表団を派遣する。
議題は、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、医療分野における安全保障や科学技術、5G、サプライチェーン(供給網)の見直しなどを予定する。いずれも中国を意識している。米側には5G、半導体、サーバーなどハイテク分野に強い台湾のリソース(資産)を活用し、安全保障を強化する狙いがある。
台湾も経済的に過度な中国依存から脱却し、米との経済対話を通じて自由貿易協定(FTA)に結びつける狙いがある。台湾の外交部(外務省)は11日、「今回の対話は米台の経済関係の大きな節目。さらに関係強化が進むことを期待する」との声明を発表した。
一方、米台の新たな経済対話の創設に対し、中国は強く反発している。中国と台湾の間には既に、経済の一体化をめざした経済協力枠組み協定(ECFA)がある。10年間にわたって経済連携を深めてきた。米台の経済対話は事実上、その分断を狙ったもの。中国外務省の汪文斌副報道局長は11日の記者会見で「断固反対する」とコメントした。
経済対話は、中国に強い対抗姿勢を見せたトランプ米政権が、8月下旬に創設を発表した。バイデン前副大統領を筆頭に、新たな政権への移行準備も進むなか、どこまで経済対話が実効性のあるものになるのかは、依然不透明な部分も残る。