マスターズのデシャンボー「無観客の空間利用する」

男子ゴルフの2020年メジャー最終戦、マスターズ・トーナメントの開幕を2日後に控えた10日の公式記者会見、ブライソン・デシャンボー(米国)がすらすらと語り出した18ホールの使用クラブは驚きをもたらした。3番パー4は1オン、パー5はすべて楽々2オン可能で、パー4の大半を短いアイアン、ウエッジでグリーンを狙うという。
公式練習初日の9日、大会5勝、2度目の連覇を狙うタイガー・ウッズ(米国)らと練習ラウンドをともにした。11番パー4の第2打で選択したピッチングウエッジは、1997年に当時21歳のウッズが2位に12打差をつけて圧勝した際と同じなのを直接本人に確認したという。「ちょっといい気分だった」
オーガスタ・ナショナルGCはウッズ登場後の2000年代初頭、11番を含む距離延長の改造が施された。およそ20年を経て、コースの進化に再び追い付き追い越していこうとするアスリートの先頭に立つ自分に何やら酔いしれているふうでもある。

「パトロンがいないのは残念。ただ、おかげで普段は狙えない場所に打っていける」。18番、ティーからだと正面に立ちはだかって見えるフェアウエー左バンカーを越えていくと宣言。パトロンの移動スペースを使えば、「グリーンまで110ヤードかな」とにやり。このバンカーは1960年代、ジャック・ニクラウス(米国)の当時圧倒的な飛距離に対抗して2つ並ぶように造成、拡張されたオーガスタの歴史ある「わな」だ。
19カ月前の前回大会、ティーショット平均飛距離は299ヤードと25番目にすぎなかった男が、9月からの新シーズン、平均344ヤードを記録、米ツアーで一番の飛ばし屋になった。この1年で50ポンド(約23キログラム)増やした体重のほとんどが筋肉で風貌は一変、9月の全米オープンではメジャー1冠の栄誉も手にした。
デシャンボーは97年のウッズのような革命的勝利を遂げるのか。好奇に満ちた視線をかわし、当の本人は至って冷静だ。「飛距離で有利なのは確かだけれど、きちんと寄せてパットを決めてこそ。僕はまだまだコースを学ばないといけない」。初日までの残された時間をおもにグリーン上の課題解決にあてる。予選ラウンドは優勝候補の一角、世界ランキング2位のジョン・ラーム(スペイン)らと回る。
(串田孝義)