バイデン氏、欧州首脳と電話協議 一部閣僚指名26日めど

【ワシントン=中村亮、ロンドン=中島裕介】米大統領選で当選を確実にした民主党のバイデン前副大統領は10日、欧州首脳と相次いで電話で協議し、外交政策でも政権移行に向けた準備を加速させた。26日の感謝祭までに一部の閣僚を指名する考えも示した。トランプ大統領が敗北を認めないことに関しては「恥ずかしいことだ」と批判した。
バイデン氏は10日、英国やドイツ、フランス、アイルランドの首脳とそれぞれ電話した。英スカイニューズによると、英国のジョンソン首相は会談で欧州連合(EU)との将来関係を巡る交渉について、かつて紛争があった英領北アイルランドの和平を守る結果になることを保証した。
バイデン氏はアイルランド系移民の子孫で、北アイルランド問題への関心は強い。ジョンソン政権はEUとの交渉が決裂した場合に、EUとの離脱協定に定められた北アイルランド和平を維持するための約束を修正する法案を打ち出している。バイデン氏は9月中旬にはこれに強い懸念を示すツイートを投稿しており、英議会でも法案審議が紛糾している状況だ。
バイデン氏はEU加盟国アイルランドのマーティン首相とも10日に電話で会談し、北アイルランド和平を守ることの重要性を確認した。
英政府によると、ジョンソン氏は2021年11月に英国で開催予定の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)にバイデン氏を招待した。英国が21年に議長国を務める主要7カ国首脳会議(G7サミット)などの場で直接会談したいとの意向も伝えた。
フランスのマクロン大統領も10日、バイデン氏と協議し、気候変動、公衆衛生、テロ対策などについて新政権と協力したいとの意向を示した。ドイツのメルケル首相も同日、バイデン氏と電話した。カナダのトルドー首相は9日に話した。
バイデン氏は医療保険制度に関する講演後、記者団に対して「どんな形であってもトランプ政権が我々の勝利を認めないことが(政権移行に向けた)流れを変えることは全くない」と指摘した。「一貫したやり方で政権やホワイトハウスの立ち上げを進めて閣僚に誰をあてるかを精査していく」と強調した。閣僚の早期指名で政権移行の流れを加速する。
トランプ氏が敗北を認めず法廷闘争を続けていることには「恥ずかしいこと」と批判した。共和党上院トップのマコネル院内総務らがトランプ氏の法廷闘争を支持する考えを示したことを巡り「一部の例外を除いて共和党全体が現職大統領に軽く脅されているのだと思う」と述べた。トランプ氏は共和党支持者に人気が高く、共和党指導部はトランプ氏と真っ向から対立するのは得策ではないとみているとされる。