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NHKのネット事業費、上限200億円 肥大化懸念強く

NHKはネット事業の強化に意欲をみせる

NHKは10日、インターネット事業費の上限を年200億円とする案を決めた。これまで上限を撤廃する考えを示していたが、外部から「(費用が)青天井になる」などと批判が相次ぎ、ひとまず上限を200億円とする。ただ放送を補完する位置づけだったネット事業の拡大に意欲をみせており、NHKの肥大化懸念は強まる可能性がある。

同日の経営委員会で議決し、総務省に認可申請した。総務省はNHKの案についてパブリックコメントを募り、最終的に認可するかを決める。

NHKは9月、毎年の受信料収入の2.5%としているネット事業費の上限を無くす考えを明らかにし、代わりにネット事業費の金額そのものを示すとしていた。

放送と通信の融合は時代の流れだが、「費用の上限を明示せずにNHKがネット活用を拡大するのは、民間企業の市場競争に影響を及ぼしかねず適切でない」(日本民間放送連盟)などとの声が出ていた。

こうした指摘を受け、NHKでは上限を設ける形の折衷案にしたようだ。ただ21年度のネット事業の見通しは192億円で受信料収入の2.8%になる。今回示した上限より少ないが、比率でみると2.5%より高い。事業環境に応じてネット事業費を上乗せすることもできる。

NHKは放送法に基づく特殊法人で受信料に支えられている。法人税を支払わず、納税は地方税の一部にとどまる。広告収入が主な収入源の民放とは状況が異なり、公平な競争が阻害されているとの見方がある。

NHKもBSやラジオのチャンネル削減などでサービスを縮小する方針だが、受信料引き下げの議論は十分に進んでいない。こうした状況でネット事業費を増やせば肥大化が進む可能性がある。

NHKの前田晃伸会長はネット業務について「抑制的に行う」と説明する一方、「本来業務の位置づけの方が実態に合っている」とも話している。「本来業務」は主力事業という意味だ。テレビ離れが進むなか、ネットをNHKの主力事業に据えたいという意欲の表れと言える。

NHKは、テレビの設置の届け出を義務化する制度改正を総務省の有識者会議で求めている。受信料の徴収費が減り、受信料の引き下げにもつながるとしているが、ネット業務の拡大を見込んだ施策との見方もある。

経営改革 歩み鈍く


 NHKは、受信料引き下げなど経営改革の歩みが鈍いなか、インターネット事業の拡大を進めている。これが「民業圧迫」との民放各社の懸念を呼んでいる。ネット事業についても「公共メディア」として、ネット配信市場でどのような役割を果たすのか不透明なまま、事業費の議論が先行している。
 NHKは8月、2021年度からの3カ年経営計画案を公表した。番組制作費の増加などで膨張してきた事業規模を23年度には20年度比7%減の6850億円に縮小する目標を示した。
 ただし、この経営計画に対する批判は少なくない。受信料引き下げなど経営課題に対する具体策に乏しかったからだ。日本民間放送連盟は「事業規模の適正化や受信料体系・水準の見直しなど多くの課題について具体的な取り組みが示されなかった」と表明している。
 NHKは、ネット事業を巡っても、動画配信などでどのようなコンテンツに注力するのかが不透明だ。受信料という潤沢な資金の使い道が明確でないことが、経営体力に劣る民放各社の懸念につながっている。ある民放幹部は「NHKのように動画を長時間配信できる余裕はない」と話す。
 「放送とネットが融合するなか、どういう役割を果たしていくのかビジョンがないまま、ネット業務を拡大している。肥大化との批判を受けるのは当然だ」。放送業界に詳しい情報経営イノベーション専門職大学の中村伊知哉学長はこう話す。NHKには受信料見直しなどの経営改革を進めたうえで、ネット時代の役割を定義することが求められている。

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