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中国新興、センサーとビッグデータで車の事故防止

中国スタートアップ「清研微視電子科技(Tsingtech Microvision)」(以下、清研微視)がシリーズB+で約1億元(約16億円)を調達した。出資者は「創谷資本(Chuanggu Capital)」「柳州柳東引導基金(Liuzhou Liudong Guidance Fund)」「蘇州市呉江東方国有資本(Suzhou Wujiang Orient State-Owned Capital)」など。調達した資金は研究開発、商用車向けの保険サービス業務の拡張に充てられる。

ハンドル操作の特徴から、運転手の疲労度を検出する(清研微視電子科技)

2013年5月に設立された清研微視は、「乾融創禾資本管理(Qianrong Chuanghe Innovative Capital Management)」「清研資本(Tsinghua Researchn Capital)」などからシリーズBで数千万元(数億円)を調達している。同社は主に「AI搭載機器+クラウド制御+ビッグデータ」を中心に据え、インテリジェント化されたセーフティードライビングのための総合ソリューションを提供する。同社のコア技術には車載インテリジェントシステム、走行中パラメーターのリアルタイム取得とその分析、運転支援機能、リモートでの情報処理、クラウド制御プラットフォーム開発などが含まれる。

清研微視は「清華大学蘇州自動車研究院(Shuzhou Automotive Research Institute. Tsinghua University)」で起業され、コアメンバーは2006年から清華大学でドライバーの異常状態と不適切な運転に対するモニタリングと警報技術の研究に従事してきた。創業者の張偉CEOは、AI分野で10年以上の技術開発経験を持っている。

張氏は「中国国内の保険会社は毎年交通事故による支払いが約1兆元(約15兆7000億円)もあり、商用車の自動車保険損害率は85%を超え、総合原価率は120~130%で、損失が最も大きい分野だ。疲労時の運転、漫然運転、不適切な車線変更、わき見運転、スピード違反、飲酒運転などが衝突、追突などの交通事故を引き起こす原因となる」と語る。

これらの問題を解決するために、清研微視は貨物輸送および旅客輸送を手掛ける自動車運送業者、商用車向け自動車保険を扱う保険会社に対して、車載インテリジェント端末とクラウドを利用したビッグデータサービスを提供している。

歩行者の行動予測などのシステムも開発している(清研微視電子科技提供)

同社のインテリジェントハードウエアは、フレキシブルな生体信号計測センサー、ドライバーモニタリングシステム(DMS)、ステレオカメラを使用した先進運転支援システム(ADAS)、ブラインドスポット検知(BSD)などを搭載し、ドライバー、車両、道路の状況をリアルタイムでモニタリングし分析する。ドライバーについては、疲労、集中力散漫、喫煙、携帯電話の使用、シートベルトの未着用など、車両については、急な加速や減速、急展開、スピード超過、急ブレーキなどをモニタリングする。さらに車線逸脱警報、前方衝突予測警報、歩行者衝突予測警報、死角監視、車両のリアルタイム位置モニタリング、遠隔画像モニタリングなどの機能も提供する。

現在、清研微視の顧客は「中国人民保険(PICC)」「中国平安保険(PING AN INSURANCE)」「中国太平洋保険(CPIC)」などの保険会社、「京東集団(JD.com)」「韻達快逓(Yunda Express)」などのECおよび運送企業、「陝西汽車(Shaanxi Automobile)」、「江鈴汽車(Jiangling Motors)」「東風汽車(Dongfeng Motor)」「徐工集団工程機械(XCMG Construction Machinery)」などの商用車メーカーだ。

清研微視は商用車向け保険サービスによって、顧客の事故率を効果的に低減させている。これによって保険会社の損害率と支払額を減らし、リスク評価と価格決定能力、顧客管理レベルを向上させることに貢献した。

また運送企業関連の事例では、韻達物流が約3600台の車両にドライバーの状況モニタリング製品を設置し、2018年の交通事故率と損害率を前年より50%減少させた。さらに2019年からは中国人民保険との提携プロジェクトによって、約4000台の車両に衝突予測警報や死角監視を備えたインテリジェント端末を設置し、これによって損害率はさらに35%減少した。

現在、清研微視の主な収益源は車載インテリジェント端末の販売、商用車のクラウド制御サービスの提供だ。業務モデルの多角化に伴い、今年の売上高は大幅に増加する見込みだ。

同社の優位性について張氏は以下の点を挙げた。清研微視のDMS技術は中国国内で初めて完成車メーカー工場の技術検証を経て、Tier1(1次サプライヤー)の量産ラインへの供給を実現した。さらに中国で唯一、ハンドル操作の特徴からドライバーの疲労状況を検出する技術を所有する。また、ステレオカメラによる立体ビジョンシステムを開発し、昼夜を問わず全天候下での物体検知を可能にした。また、低コンピューティングパワーの組み込みシステムに適した学習加速技術を開発し、より正確な距離計算、歩行者行動予測および複数の物体を同時識別する能力を備えている。

市場規模については、貨物車両の保険サービスの市場規模は3500億元(約5兆5000億円)。インテリジェント機器の販売に関しては、2020年の商用車の生産台数は約480万台であることから、DMSとADASが商用車の標準設備となった場合、市場規模は96億元(約1500億円)に達する。また、中国全土で「両客一危(観光バスと長距離バス、危険物運搬車両を指す)」に相当する車両は約72万台あり、2018年に交通部(Ministry of Transport)がこれらの車両にインテリジェント映像モニタリングや予測警報装置を取り付けるよう通達を出しており、この要求に基づく市場規模は17億3000万元(約270億円)に達する。また中国全土の公共バスは約65万台で、公共バスのインテリジェント端末市場の規模は約55億元(約860億円)と見込まれる。

運転支援システムに対する市場の需要は、データ分析サービスへの需要でもあり、清研微視の製品とサービスは大きな可能性を持っている。張氏は、同社が創業期から成長期へ移行する段階にあり、今後数年で事業が急拡大すると予測している。また同氏は「我々は自社の発展だけではなく、中国国内のより多くのコネクテッドカー分野の企業と提携し、共に業界の発展のために力を尽くしていきたい」と述べた。

「36Kr ジャパン」のサイトはこちら(https://36kr.jp/)

中国語原文はこちら(https://36kr.com/p/922669680822152)

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