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パラ選手支える技術者 東京大会延期もバネに熱く

パラリンピックの選手たちを支えるのが、競技用具のメーカーだ。一般アスリート向けに比べ市場は小さく、個人に合わせての開発は手間もかかる。それでも世界に挑もうとする選手たちの力になりたい。東京大会の開催延期もバネに、技術者たちも熱く技術を磨く。

RDS 選手の復帰後押しする<陸上競技用車いす>

選手の重心移動や手の力の入り方まで解析して作る(埼玉県寄居町)

「かっこいいマシーン作るから、もう一回、世界目指そうよ」。工業デザインを手掛けるRDS(埼玉県寄居町)の杉原行里社長は、熱を込めて語りかけた。相手は2008年の北京パラリンピックで、車いす男子400メートルなど2つの金メダルを獲得した伊藤智也だ。

引退して5年がたっていた伊藤はRDSの最新の競技用車いすの構想を聞き、開発に参加。完成品に乗って勝負の世界に復帰し、19年の世界選手権で3つのメダルを獲得した。東京パラリンピックで再びの金メダルを目指す。

RDSは松葉づえなど福祉用品のデザインを手掛けたことをきっかけに、冬季パラリンピック競技のチェアスキーの用具開発に参入。合計7個のメダル獲得に貢献し、杉原社長と技術者たちは自社の技術が選手と躍動する喜びを知った。

陸上への参入は、千葉工業大学と共同で車いす型シミュレーター「SS01」を開発することから始まった。選手の重心移動や左右の手の力の入り方、車輪の回転速度などを数値化することに成功。体の形状を3D計測し、ぴったりの座面を作成することも可能だ。

このシミュレーターで伊藤のフォームを解析し、競技用車いす「WF01TR」を開発した。背もたれの位置やシートの厚み、車輪の位置などを最適化し最高のパフォーマンスを引き出す。「体のサイズだけでなく、自分のフォームにぴったり合った車いすは他にはない」と伊藤は話す。

新型コロナウイルス禍で伊藤とは会えない状況が続くが、杉原社長は「ハンドルの形状や素材の微調整も本人に部品を送って対応できる」と自信を見せる。

RDSはSS01を一般の車いすの調整に応用する考えだ。一人ひとりの体に合わせた車いすを低コスト・短期間で作ることを目指す。杉原社長は「金メダルだけが目的ではない。パーソナライズの文化を世界に広げたい」と大会の先を見据える。

(木村祐太)

ダイヤ工業 道具と体を調和させる<サポートウエア>

ゴム素材の伸縮で義足をつけた脚の振り出しなどを助ける

サポーター・コルセット大手のダイヤ工業(岡山市)は十数人のパラ選手向けにサポートウエアを提供している。開発を担当する川上真幸氏バイスチーフエンジニアは「(義足など)道具と体を調和させることが役割」と語る。

選手の要望を聞きながらサイズや素材の配置を決める。特に筋肉の動きをサポートしたい部分は2層構造にする。例えば義足だとスタート時に脚を振り出したり、走りながらバランスをとったりするのが難しい。太もも部分に配置したゴム素材が伸縮することで、脚を前に出しやすくなる。

19年には東京に開発拠点を開いたが、コロナ禍でいったん閉鎖した。大会期間中の選手を支援するためにも、再び東京に拠点を構えることを目標に据える。

並行して改良を進めているのが、骨格や筋肉量を測定する3Dボディースキャナーだ。現在の性能では腕や足に欠損があるパラ選手の身体データを正しく測定できない。生地の厚みや大きさを自動で最適化できるようになれば、より早く効率的なフィッティングが可能になる。

パラ選手向けのサポートウエアをオーダーメードで作る企業は世界的にも少ないという。「当社はスポーツウエアの分野では小規模だが、大手がやらない分野にこそ強みが生かせる場がある」と川上氏は話す。

(加藤敦志)

山本光学 ボールの衝撃和らげる<アイシェード>

ボールが顔に当たった際の衝撃を和らげる構造にした

鈴が入ったボールをゴールに投げ入れる視覚障害者の球技、ゴールボール。選手はゴーグルに似たアイシェードで完全に目隠しして競技する。「SWANS」ブランドのスポーツ用ゴーグルを手掛ける山本光学(大阪府東大阪市)はこのアイシェードを開発した。

これまで日本には専用製品はなく、海外製やスキー用ゴーグルを改造したものが使われていた。1.25キログラムあるボールが時速50キロメートルで投げられることもあり、目や鼻を保護するため日本人の顔の形に合ったモデルが求められていた。

同社は日本ゴールボール協会の依頼を受け採算度外視で着手。18年に発売したモデルは顔への衝撃を和らげるため、フレームの周りが一段張りだすリブ構造を採用した。正面部には透明のポリカーボネート素材のシートを装着して強度を高めている。

スキーのゴーグルのようなデザイン性やカラフルさも特徴だ。「視覚障害者用では黒い色をイメージする人が多いが、女性の選手から要望があり見た目にも工夫を凝らした」と開発担当の船本富広常務は語る。東京大会が延期となったことを契機に、鼻の高さなどが異なる海外の選手向けにカスタマイズした製品の開発も進め、各国チームでの採用を目指す。

(斎宮孝太郎)

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