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厚生年金、離婚したら夫婦で半分ずつに

離婚とお金(下)

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筧家のダイニングへ恵が浮かない顔で入ってきました。「友達のご両親が離婚の危機らしいんだ。家の空気がピリピリして大変そう」。新聞を読んでいた良男が「僕たちと同世代なんじゃないか。他人ごとじゃないなあ」と顔を向けます。

筧(かけい)家の家族構成筧幸子(48)良男の妻。ファイナンシャルプランナーの資格を持つ。筧良男(52)機械メーカー勤務。家計や資産運用は基本的に妻任せ。筧恵(25)娘。旅行会社に勤める社会人3年目。筧満(15)息子。投資を勉強しながらジュニアNISAで運用中。

 友達は、お母さんはずっと専業主婦だったから経済的に離婚は厳しいと思うと言ってた。これから職探ししなくてはいけないし、将来もらえる年金も少ないんじゃないのかな。

幸子 確かに専業主婦が65歳になってもらうのは老齢基礎年金で、老後の生活に十分な金額とはいえない。それに夫が会社員で厚生年金に入っていれば、扶養内にいる妻は保険料を払わなくていいけれど、離婚すれば自分で払わないといけなくなる。ただ、夫が受け取る老齢厚生年金は離婚後、妻も分割してもらえる制度があるのよ。

良男 聞いたことがあるぞ。

幸子 離婚した夫婦が受け取る年金に格差があるのは不公平だなどとして、2007年に離婚時の年金分割制度ができたの。「合意分割」といって、婚姻期間中の厚生年金(保険料納付記録)を夫婦の話し合いにより、50%を上限に分割するという内容よ。08年には一方が専業主婦など第3号被保険者の場合、被扶養者が年金分割の請求をすれば、合意がなくても2分の1を受け取れる「3号分割」の制度もできた。厚生年金保険・国民年金事業年報によると、年金分割の件数は18年度に2万9000件近くに増えたわ。

 半分もらえるのは経済的に大きいよね。

幸子 注意したいのは、夫が受け取るすべての年金を分けるのではなく、厚生年金の基礎年金部分を除いた報酬比例部分ということ。妻も厚生年金に加入していたら、その部分は夫の年金額と合算した上で分ける。多い方から少ない方に分割する制度で、妻の年金額が多ければ、夫に分けるの。あとは合意がなくても半分受け取れるのは、婚姻していたうち08年4月以降の第3号被保険者だった期間よ。ただ、合意分割でも多くのケースで割合は半分のようね。

 自分で期間を把握したり計算したりするのは大変そう。

幸子 年金事務所に「情報通知書」を請求すれば分割の対象期間などの情報が提供されるわ。実際にどれだけの年金が将来受け取れるかの見込み額は、50歳以降であれば通知書に記載されるのよ。それより若ければ、見込み額は社会保険労務士に試算してもらうのも手ね。

良男 大体、どれぐらい受け取っているんだろう。

幸子 厚生年金保険・国民年金事業年報によると、年金分割して被扶養者側が受け取った金額は平均で月3万1000円前後だったわ。

 結婚していた期間が長いほど制度を使わないと損ね。

幸子 合意や裁判などで割合を決めたら、手続きも必要。離婚後2年以内に年金事務所へ年金分割を請求しなくてはならないの。弁護士の折井純さんは、「家庭裁判所の審判や調停で案分が決まると、それで大丈夫と思う人もいるが、必ず自分で手続きするように」と注意喚起している。手続きを終え、「標準報酬改定通知書」を受け取ると、被扶養者は自分が65歳になれば、分割された年金が口座に直接振り込まれるのよ。

良男 もし、その後にどちらかが再婚したり亡くなったりするとどうなるんだ?

幸子 例えば夫が再婚しても、分割を受ける元妻の受け取り分に影響はない。夫が亡くなっても同様よ。既に元妻の年金に切り替わっているからね。妻が再婚した時も変わらずに分割した年金を受け取れる。妻が死亡しても、元夫に分割分が戻ることはなく、年収などの条件を満たせば新しい夫に遺族年金が給付されることになるのよ。

 年金といえば、会社からもらえる企業年金もあるけど、どうなるのかな。

幸子 こちらは公的年金のように決まった制度はなく、話し合いや裁判でどれぐらい分与するかを決めることになるわ。会社の年金が確定給付型で定年退職が近く、もらえる金額を一時金に換算して出せるような場合は、この金額が分与の対象になることもある。一方、定年退職まで時間があり、今後勤め続けるか定かでないような場合は、離婚時点で会社を自己都合で辞めた時にもらえる金額をもとに計算することが多いようね。

 確定拠出年金(DC)だと運用次第で将来もらえる金額が変わるから、ややこしそう。

幸子 個人型確定拠出年金(iDeCo=イデコ)もそうだけど、掛け金をいくらにするか、それをどう運用するか、結果どうなるか、将来のことはわからない。なので離婚時点の積立金の評価額を分与の対象とするのが一般的だそうよ。どちらも原則60歳まで引き出せないけれど、弁護士の冨永忠祐さんは、「分与は離婚時の一時払いが基本」と話すわ。将来受け取ることになる年金とは異なる点ね。

良男 民間保険で終身保険に入っている時はどうなんだ。

幸子 離婚時の解約返戻金が分与の対象になるわ。ただ保険は途中解約すると、それまで支払った保険料よりも返戻金が少なくなることが多い。ファイナンシャルプランナー(FP)の新美昌也さんによると、それを避けるために例えば、離婚前に夫から妻に保険を名義変更して契約を続けるケースもあるそうよ。

別居期間や事実婚も対象


弁護士 冨永忠祐さん
 離婚時の年金分割制度、特に3号分割ができてからは、婚姻期間の厚生年金は配偶者からの請求で保険料納付記録(標準報酬)の2分の1が自動的に分割されることになり、もめることが少なくなりました。一方、私的年金は離婚時の他の財産分与と同様、協議や裁判等で分け方を決めます。判例も確立しておらず、合意が難しいケースもあります。
 年金分割の対象期間には夫婦の別居期間も含まれます。老後の所得保障の観点から、離婚後の年金格差を是正する目的で制度が定められたことが背景です。事実婚(内縁)の夫婦でも第3号被保険者の期間は、年金制度で婚姻関係があることが認定されており、年金分割が可能です。一方、私的年金では別居中に払った保険料分は対象から外すという考えも成り立ち、判断は個別となります。(聞き手は成瀬美和)

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