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花形の「100」で大番狂わせ パラ陸上・大島健吾(上)

大会がなかった期間、知り合いの理学療法士とともに自分の走りを見つめ直した

9月6日の日本パラ陸上競技選手権。パラ陸上界が新型コロナウイルスに向き合いながら再出発を果たした大会の男子100メートル(義足・機能障害などT64)で、大島健吾(名古屋学院大)が大番狂わせを演じた。

スタートで勢いよく飛び出すと、アジア記録保持者の井谷俊介(SMBC日興証券)ら並みいる実力者を抑えてゴールラインに先着。大会は無観客開催だったが、関係者のどよめきが競技場に渦巻いた。

優勝タイムは当時の自己ベスト11秒93。さぞかし会心のレースだったのかと思いきや、当の本人は「最後に井谷さんが視界に入ってフォームが崩れた。少しもったいなかった」と浮かない表情。「(現時点で)11秒7とか8を出す力は持っている」との思いがあったから悔いが残った。

高校時代はラグビーに打ち込んでいた。陸上を始めたのは大学入学後。コロナ禍で各選手の調整度合いに差があるとはいえ、キャリア約2年半の20歳が陸上の花形種目である100メートルを制したのは驚きだ。

コロナの影響で大会がなかった期間、知り合いの理学療法士の知見も借りて走りを見つめ直した。「ガツガツと(数を)走るよりも、フォームの修正に重点を置いてやってきたことがよかった」。まずは走りの癖を分析し、反りがちだった上半身の姿勢を修正。体が左右にブレにくくなり、勢いを保ったまま100メートルを走りきれるようになったという。

最終盤こそバタついたが、井谷らの追い上げをかわして勝った日本パラは「一つの大きな自信になった」。確固たる自信は若者の成長をさらに加速させる。10月、東海学生陸上秋季大会では11秒59をマーク。井谷のアジア記録11秒47にまた一歩近づいた。

東京パラリンピックが予定通り今夏に開催されていれば、大島は観衆の一人としてレースを外から見つめることしかできなかったはず。実際、以前のパラへの気持ちは「(いずれは)出場して、雰囲気や他の選手の走りを横で感じてみたい」と控えめなものだった。

それが1年の延期と、自らの急成長によってガラリと変わった。「力がどれだけ通用するのか。決勝に残りたい」と。

本人の見立てによれば、東京パラ決勝の舞台に立つために必要なタイムは11秒2。100メートルという競技において、自己ベストとの差である0秒4は決して小さくない。それでも「まだ成長が止まる時期ではない。(11秒2は)遠いけれど、いけると思っている」。真っすぐに、自らの伸びしろの大きさを信じている。=敬称略

(木村慧)

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