首相、追加経済対策を指示 デジタル・脱炭素に重点

菅義偉首相は10日の閣議で、追加経済対策をまとめるよう指示した。2020年度第3次補正予算を編成し、雇用維持や景気を下支えする対策に加え、デジタル化や脱炭素社会の実現に向けた投資を促す施策を盛る。新型コロナウイルスの感染が拡大する傾向にあり、経済再生と感染防止策の両立が課題になる。
追加対策は(1)新型コロナ感染の拡大防止(2)ポストコロナに向けた経済構造の転換(3)防災・減災の「国土強靱(きょうじん)化」――の3分野が柱となる。第3次補正を21年度当初予算と一体で編成する「15カ月予算」と位置づけた。
首相は10日の閣議で「ポストコロナに向け、経済の持ち直しの動きを確かなものとし、民需主導の成長軌道に戻していく」と述べた。自治体のデジタル基盤の改革支援やマイナンバーカードの普及促進に注力すると表明。低金利環境を生かし、財政投融資を積極的に活用する姿勢を示した。
ポストコロナの経済構造の転換に向けて官民でデジタル化を進める。温暖化ガス排出量「2050年ゼロ」目標と企業活動の相乗効果をめざす「グリーン投資」も促す。中小企業や働き手が生産性の高い事業や仕事に転じることも支援する。
7~9月期の実質国内総生産(GDP)はプラス成長となるが、コロナで落ち込んだ分の半分程度の回復と予測される。経済財政諮問会議の民間議員はこれまでのコロナ経済対策によるGDP押し上げ効果が20年度の約35兆円から21年度は約4兆円に縮むと試算。人の移動と外需の回復で補えない分は追加策で下支えするよう求めている。
与党では30兆円規模の3次補正を求める声がある。政府は防災・減災のための公共事業を積み増し、既存の消費喚起策や雇用調整助成金の特例措置を延長する方針だ。
波乱要因は感染の再拡大だ。11月に入って1日あたりの新規感染者数は1千人超が続く。感染がさらに広がれば、国内旅行を最大半額補助する「Go To トラベル」の想定も狂う。加藤勝信官房長官は感染拡大が続く北海道が対象外になる可能性に言及した。
首相は感染拡大地域での集中的な大規模検査や専門人材の応援派遣などの対策を講じる考えを示している。