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米歳出 10年で1000兆円増 バイデン氏、経済再生急ぐ

バイデン氏は米経済の立て直しが最大の課題となる=AP

【ワシントン=河浪武史、鳳山太成】米大統領選で勝利が確実になった民主党のジョー・バイデン前副大統領(77)は、新型コロナウイルスで大幅に悪化した米経済の立て直しが最大の課題となる。バイデン体制は4年で2兆ドル(約207兆円)という巨額投資計画で経済の押し上げを狙う一方、巨大IT企業や金融機関への規制強化に動く可能性もある。

雇用 インフラに巨額投資

「この国の可能性を信じ、中間層を再構築する。米国の傷を癒やすときがきた」。バイデン氏は7日の勝利演説で、雇用の立て直しを優先課題に挙げた。大型減税や規制緩和を前面に出したトランプ政権と異なり、バイデン氏は富裕層・企業に増税し、インフラ投資などで雇用を増やす「大きな政府」を明確に目指す。

再生エネルギーや公共インフラには4年で2兆ドルという過去に例のない巨額投資を公約する。社会保障給付の積み増しなども合わせれば、歳出増は10年で10兆ドル規模とも試算される。

実行は上下両院の協力体制にかかってくるが「バイデノミクス」の歳出増は国内総生産(GDP)の5%前後に相当し、2022年の経済成長率を3%近く押し上げる可能性がある。これだけの歳出増を計画するのは、戦時を除けば大恐慌時の1930年代の「ニューディール政策」以来だ。

オバマ政権で米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたジェイソン・ファーマン氏は「米連邦準備理事会(FRB)のゼロ金利政策で政府債務の負担は小さい。今こそ財政出動で長期的な課題に取り組むべき時だ」と話す。

バイデン氏は戦後最悪となった所得格差の是正も公約する。新型コロナは低所得層を直撃し、3月だけで年収4万ドル未満の世帯の4割が失職した。中低所得層の医療費や教育費の支援へ、企業や富裕層に増税を求める。

増税案は10年で4兆ドル超と試算され、同1.5兆ドルだった「トランプ減税」の3倍近い。税制は上下両院の専権事項でバイデン案の完全実現は難しいが、株式取引への課税強化など、制度設計次第では市場取引への影響が避けられない。

コロナ 感染抑止へチーム発足

新政権発足をにらんで具体的な動きを先行させるのが、最悪ペースで感染が広がるコロナ対策だ。9日、13人の専門家からなる新型コロナウイルス対策チームを発足したと発表した。公衆衛生政策の専門家や感染症学者を集めて流行の拡大を抑える計画をつくり、2021年1月20日の就任初日から実行に移せるようにする。

米メディアによると、バイデン氏とカマラ・ハリス氏は9日、デラウェア州で対策チームと初会合を開く。バイデン氏は声明で「コロナ感染への対処は政権の最重要課題だ。私は科学や専門家の意見を聞く」と述べた。対策チームはオバマ前政権で医務総監を務めたマーシー氏らで構成する。

米国のコロナ死者数は23万人を超えて世界で最も多い。バイデン氏はトランプ政権のコロナ対策を失政と批判してきた。バイデン氏らが次期政権に向けた初めての活動としてコロナ対策チームとの会合を選んだのは、現政権からの政策転換を印象づける意味合いもある。

バイデン氏は人種問題も次期政権の重点課題に掲げた。具体策は今後詰めるが、人種間の格差是正へ、黒人やヒスパニックが手軽に住宅を購入できるようにする投資計画を策定する方針だ。FRBにも、金融政策を考える上で人種間の経済格差に焦点を当てるよう求めるという。

米国では黒人が白人警官に殺害された事件を機に全米に抗議デモが広がった。次期政権は首を押さえて拘束するのを全米単位で禁じるなど警官の過剰な取り締まりを減らす警察改革も掲げた。

規制 ITや金融 強化も

選挙戦の終盤に米議会で噴出した巨大IT企業への規制強化論にどう対応するかも、次期政権の重要課題だ。民主党はフェイスブックやグーグルなどの事業分割まで視野に入れる。

バイデン氏は巨大IT企業の解体論には言及しないが、反トラスト法(独占禁止法)による監視強化を支持する立場だ。共和党はIT企業の分割論には反対しており、規制強化の行方は上下両院の勢力図次第となる。

格差是正を求める中低所得層だけでなく、ウォール街もバイデン氏を支持する。証券・投資業界からの献金額は7400万ドルと対トランプ氏の4倍強に達した。

民主党政権への交代で、金融機関の高リスク取引を禁じる「ボルカー・ルール」強化など、銀行や証券会社の活動を制約する規制が強まるとの見方は強い。それでも証券・投資業界はトランプ氏の予測不能な政策運営ではなく、経験豊富なバイデン氏による安定体制を望んでいる。

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