バフェット氏「選別」始まるか 5大商社の決算で明暗

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コラム(ビジネス)
2020/11/11 2:00
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5大商社に出資したウォーレン・バフェット氏率いる米バークシャー・ハザウェイ=ロイター

5大商社に出資したウォーレン・バフェット氏率いる米バークシャー・ハザウェイ=ロイター

日経ビジネス電子版

著名投資家のウォーレン・バフェット氏が率いる米バークシャー・ハザウェイが出資して話題になった日本の5大総合商社。11月6日に出そろった2020年4~9月期中間決算は、コロナ禍での危機耐性で明暗が分かれた。

子会社を通じて5社に約5%ずつ出資したバークシャーだが、今後の買い増しや売却の動きは、各社の業績によって異なる可能性もある。「賢人」バフェット氏の動きは、総合商社の「横並び」を変えるきっかけになるだろうか。

「景気変動への耐性が強いことを示せた」

伊藤忠商事の鉢村剛最高財務責任者(CFO)は11月4日の記者会見でこう誇ってみせた。20年4~9月期決算は前年同期比12.6%減の2525億円ながら、7~9月期の1477億円は四半期単位では過去最高益となった。

子会社のファミリーマートの税費用の減少(355億円)など一過性利益はあったものの、鉄鉱石や、中国向けの合成樹脂や日用品など化学品部門、情報・金融部門が堅調で、苦戦するアパレルやコンビニ、自動車販売を補った。

同じく化学品関連が好調だったのが丸紅。4月前後に価格が急落したエチレンを、価格上昇後にさばいて利益を出した。電力や水、ガスなど生活基盤に関わる事業の収益も安定した。20年4~9月期の最終利益が前年同期比9.0%減の1016億円と、21年3月期の最終利益予想(1000億円)を超えたため、予想を1500億円に引き上げた。「従来の予想が保守的」(証券アナリスト)だったとはいえ、コロナ禍からの回復を印象づけた。

伊藤忠商事、三井物産、丸紅は21年3月期の予想に対し、6割超の堅調な進捗を見せている

伊藤忠商事、三井物産、丸紅は21年3月期の予想に対し、6割超の堅調な進捗を見せている

三井物産の20年4~9月期最終利益は前年同期比53.0%減の1100億円。鉄鉱石事業や基礎化学品のトレードが堅調で、21年3月期の目標1800億円に対して、進捗率61%に達した。

一方、さえないのが三菱商事と住友商事だ。

三菱商事の20年4~9月期の最終利益は前年同期比64.2%減の866億円と、21年3月期の目標2000億円に対して43%の進捗率にとどまった。

コロナ禍で需要減に苦しむ出資先の三菱自動車の減損損失を取り込んで自動車部門が214億円の赤字に、原料炭の価格低迷で金属資源部門の利益は前年同期比6割減の353億円にとどまった。コロナ禍の影響は避けられないにしても、「一過性要因を除いた実力値の利益の回復ペースが、他社に見劣りしている」(証券アナリスト)との声が上がる。

住友商事は20年4~9月期の最終利益は602億円の赤字。21年3月期も1500億円の赤字を見込む。オーストラリアの発電事業、鋼管事業、インドネシアの自動車販売の金融事業、マダガスカルのニッケル事業などでそれぞれ100億円を超える巨額の損失を計上した。コロナの影響もあるが、長年の課題事業のうみが出ている面もある。

業績の差の背景にあるのは、鉄鉱石と原料炭だ。いずれも鉄鋼生産に必要だが、中国の輸入依存度は鉄鉱石がはるかに高い。経済回復の兆しを見せる中国は鉄鋼生産を増やし、鉄鉱石の価格は高止まり。一方、原料炭の価格も一時上昇したが、「中国が豪州産の石炭の通関手続きを規制する」との観測が影響して下落。鉄鉱石に強い三井物産、伊藤忠商事、丸紅は恩恵を受け、原料炭が得意な三菱商事が苦戦している。

三菱商事は、下半期に資産入れ替えによる売却益を見込んでおり、通期2000億円の達成は据え置いたが、最終利益に対する進捗率で3社に見劣りすることは否めない。不測の事態に備え、伊藤忠は500億円、丸紅は200億円の「バッファ」があるとしており、対照的だ。

■我慢と変革

三菱商事の垣内威彦社長は、「業績低迷は真摯に受け止める」と話した。1700社あるグループ会社のうち、業績が思わしくない赤字会社の累積赤字額は20年4~9月期で数百億円に上るという。デジタル化や事業再編を進めて、「結果的に数が減ってより筋肉質になることを期待したい」とした。

その一方で、「全体の事業ポートフォリオは、自信を持って最適だと思っている。市況回復が通常ペースに戻れば、びくびくするような内容ではない。我慢すべきは我慢する、辛抱すべきは辛抱する」と述べた。

総合商社はメーカーのように技術や研究といった「コア」がなく、経営の自由度の高さを生かして成長してきた。事業の売却など資産の入れ替え(リサイクル)は常に実施しており、資産リサイクルと全体的なポートフォリオの維持は両立しうる。これまでの「我慢と変革」の結果が、事業ポートフォリオとして表れているともいえる。

バークシャーは8月31日のプレスリリースで、最大9.9%まで買い増す可能性を示したが、「any of the five investments」として、全社に実行するとは言及していない。伊藤忠商事で外国人投資家の窓口を務める鉢村CFOは、「バークシャー社は正統派のバリュー投資家。商社へ投資をした事実は、今後の経営成績を前提にした『選別』の出発点だと思っている」と述べた。

得意・不得意はあるが、全体で見ると似通っていた5大商社は、「ここ2~3年で差が目立ち始めている」(格付けアナリスト)。賢人の投資動向をきっかけに、各社の違いも鮮明になっていくかもしれない。

(日経ビジネス 鷲尾龍一)

[日経ビジネス電子版2020年11月9日の記事を再構成]

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