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意外と知らない火災保険の落とし穴

20代からのマイホーム考(12)

火災保険は思った以上に複雑な商品です。契約した本人も詳細がわからないままになっていることもあるのではないでしょうか。また、住まいの購入時に、保険代理店として火災保険の手続きをしてくれる不動産会社に任せきりにしてしまったという方も多いのではないでしょうか。今回は最低限知っておきたい住宅向け火災保険の基本と留意点を紹介します。

もらい火に損害賠償請求はできない

まずは火災保険の基礎知識です。もらい火に対して損害賠償請求はできません。自分は火事を出すようなことはしないから火災保険は不要という方もいるかもしれませんが、もしお隣の失火で自宅が類焼した場合、お隣に対して損害賠償請求できないことになっています(失火責任法)。そのため火災保険は入っておいたほうがよいのです。

また、地震による火災は補償されません。地震による火災も補償範囲にしたいならば、火災保険とともに地震保険も入っておく必要があります。なお、地震保険は政府と損害保険会社が共同で運営している商品ですからどの会社の商品も全く同じです。

同じ木造で保険料が安くなる物件も

一般的なマンションであれば、専有部は壁の内側(上塗基準)となっていますが、よく確認しないままに、コンクリート壁の中心部(壁芯基準)で契約してしまったというケースも見受けられます。壁芯基準にすると専有部の面積が大きくなり保険料が上がってしまいます。マンションの管理規約を確認してどちらの基準に合わせるべきか確認しておく必要があります。

火災保険は燃えにくい鉄筋コンクリートより燃えやすい木造のほうが保険料は高くなります。しかし木造建物でも、耐火、準耐火、省令準耐火基準に合致したものであれば、保険料は安くなります。ここをきちんと確認しないで通常の木造として契約してしまっているケースもあります。一般的には、建築確認申請書で確認できます。

床下浸水は補償されない

火災保険には水災オプションを付加することができます。水災に対する保険をつけておけば、洪水や高潮、土砂崩れなどの被害にあっても安心ですが、補償されるのは、「建物評価額の3割もしくは床上浸水、もしくは地盤面より45センチメートルを超える浸水」という条件がついています。こうした条件に当てはまらない限り、床下浸水は原則として補償されません。床下浸水でも床下の泥を掻き出し、消臭や消毒作業を行わざるを得ませんので、水災に対する保険を付けていても安心というわけではないということはあまり知られていないのではないでしょうか。

マンションの場合、個人賠償責任特約をオプションで付けることがあります。これは漏水などで階下に被害を及ぼした場合にも補償される保険です。注意したいのは、マンションの管理組合で、居住者を包括して個人賠償責任特約を付けているケースがあり、この場合は個人で付ける必要はありません。

来年1月の保険料改定も要チェック

保険料改定も要チェックです。保険代理店業務などを手掛けるパブレ(札幌市)の奥村卓也氏は「ここ数年の自然災害の増加で保険金の支払いが増加していることから、来年1月も多くの保険会社で保険料を値上げする予定になっている。保険会社によって値上がり率は異なるが、保険料率を算定するための純保険料率である参考純率は平均で5%程度上昇している。なお、築年数の古い建物のほうが値上がり率は高い傾向がある」と指摘しています。

どのように対応すればいいでしょうか。奥村氏は「保険契約の満期が近く、所有建物の築年数が古い場合、12月までに見直すとよい。保険の開始時期を年内として契約すれば、値上がり前の保険料率で契約できる。短期契約の場合、年内の保険開始で長期契約にすれば、保険料を抑えられる場合がある。なお、保険代理店によって保険商品に詳しい場合とそうではない場合があるので、複数の保険代理店から提案を受けたほうがよい」としています。

火災保険は様々な保険会社が様々な商品を出しています。不動産会社が保険代理店となっている場合、一社しか取り扱っていないケースもありますし、保険商品の内容を十分に理解していないケースも散見されます。保険選びや見直しを行う場合、最低限の基礎知識を持ちつつ、複数の保険代理店から提案を受けたほうがよいでしょう。

田中歩(たなか・あゆみ)
 1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、「あゆみリアルティーサービス」を設立。不動産・相続コンサルティングを軸にした仲介サービスを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」にも参画。

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住宅資金は老後資金、教育資金と並ぶ人生三大資金です。20代、30代から考えたい「失敗しないマイホーム選び」について不動産コンサルタントの田中歩氏が解説します。隔週月曜日に掲載します。

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