ロシア、対米関係悪化を警戒 核軍縮で対話探る
【モスクワ=小川知世】ロシアは米民主党のバイデン政権の誕生に警戒を強めている。上院のコサチョフ国際問題委員長は7日、「(米国による)政治的な動機による制裁が増える」とコメントした。ロシアに融和的な発言を繰り返したトランプ大統領からの政権移行で、米ロ関係が一段と悪化するとの懸念がある。

バイデン氏はロシアを「米国の重大な脅威」と位置づける。ロシアによる2014年のウクライナ南部クリミア半島の一方的な併合などを鋭く批判してきた。8日朝時点でプーチン大統領はバイデン氏の当選確実に対してコメントしていない。プーチン政権はバイデン氏を警戒しつつ、同氏の勝利をにらんで「誰が大統領になっても連携する」と主張していた。
ロシアは核軍縮交渉を糸口に新政権との対話を探る見通しだ。21年1月に予定される新大統領の就任式から約2週間後には米ロの新戦略兵器削減条約(新START)の期限が切れる。トランプ政権との協議が行き詰まるなか、ロシアは10月に条約の1年延長を提案した。バイデン氏が延長に前向きな点にも触れ、軍縮の枠組み維持に努める立場を強調している。
トランプ政権下ではロシアが期待した関係改善が進まなかった一方で、米国のイラン核合意からの離脱などを巡って米欧が溝を深めた。バイデン氏は「トランプ氏よりは予測可能で合理的な政治判断が予想できる」(ロシアの政治専門家)ものの、米欧が関係を立て直してロシアの封じ込めに動くとの見方が強い。
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