バイデン氏当選確実、国内産業界受け止めは?
環境・エネルギーや通商政策を注視
米大統領選でジョー・バイデン氏の当選が確実になった。日本の産業界では環境・エネルギーや通商政策がどう変化するかに関心が集まる。
確実に変わりそうなのが環境・エネルギー政策だ。バイデン氏は地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」への復帰を公約しており、電気自動車(EV)の普及にも熱心。三菱商事の垣内威彦社長は「バイデン氏はストレートに脱炭素を目指している」と指摘する。
トランプ政権が開発を後押ししてきたシェールオイル・ガスに対しては、環境保護の観点から規制が強まる可能性がある。ライオンの掬川正純社長は「シェールの生産状況に影響が出れば、原油を中心とした原材料や容器などのプラスチック材料の価格に影響を及ぼすこともあり得る」とみる。
通商政策はどうか。トランプ政権は米国内の製造業の保護政策を推進し、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しや輸入品への関税引き上げなどを相次ぎ実行してきた。バイデン氏は鉄鋼・アルミ関税の見直しに言及するものの、他国への生産移転に懲罰税導入を訴えるなどトランプ氏と同様の保護主義的な「顔」ものぞかせる。「トランプ氏のように直接、産業界に介入することはないが、バイデン氏も米国の産業保護には熱心に取り組むはず」(化学大手)との声が上がる。
対中政策を巡っては「先端技術の覇権を争う対立はなかなか改善しないかもしれない」(伊藤忠商事の鉢村剛・最高財務責任者=CFO)との見方も。中国の華為技術(ファーウェイ)への禁輸措置などが続けば、中国企業に部材を供給する日本企業の影響長期化は避けられない。
もっとも、バイデン氏が勝利宣言したとはいえ、トランプ氏は法廷闘争する構えを見せている。「決着に時間がかかると為替の方向感が見えなくなる」(日清食品ホールディングスの横山之雄CFO)と為替相場への波及を懸念する声も出ている。
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