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日本製鉄とミタル、緊張から共同歩調へ 中国勢に対抗

米国で電炉建設

日本製鉄と欧州アルセロール・ミタルの提携関係が深まっている。日鉄は6日、ミタルと米国に電炉を新設する方針を正式に表明。インドでも共同で製鉄所を傘下に置いた。両社の関係は時に強引な買収を重ねるミタルに、日鉄が買収防衛策を打ち出すなど緊張をはらんだものだった。それが一転。ともに業績が低迷するなかで共同歩調を強め、台頭する中国勢に対抗する。

日本製鉄が売却する自動車用鋼板工場(米インディアナ州)

「グローバル戦略での新たな選択肢を確保できる」。日鉄の宮本勝弘副社長は同日の記者会見で米国事業見直しの意義をこう強調した。見直すのはミタルと共同出資する自動車用鋼板の2拠点。まず老朽化したインディアナ州の工場は現地企業に売却する。売却額は数百億円とみられ、年内にも手続きを完了する見通しだ。

代わりに南部アラバマ州の拠点を強化する。電気の熱で鉄スクラップを溶かして鋼板の母材を生産する電炉を建てる。米国の安い電力料金をいかし、同拠点で自動車用鋼板を一貫生産できる体制を整える。従来はミタルがブラジル拠点から母材を持ち込んでおり、輸送コストが課題だった。「電炉を持てば、母材の輸入規制にも対応できる」(宮本副社長)という。

今回の電炉建設以外にもここ数年、両社による共同出資が続いている。アラバマ州の拠点は2014年に独ティッセン・クルップから1600億円で買収したもの。インドでは19年に7700億円を投じて現地の鉄鋼大手、旧エッサール・スチールを傘下におさめている。

共同での投資案件が増える両社だが、かつては緊張をはらんだ関係だった。ミタルは00年代に世界各地で買収を繰り返し規模を拡大。06年1月には欧州アルセロールへの敵対的TOB(株式公開買い付け)を発表し、7月にはTOBを成立させた。

一方、当時の新日本製鉄(現日鉄)はミタルの攻勢に危機感を強め、06年に神戸製鋼所やのちに経営統合した旧住友金属工業と買収防衛で協力関係を結んだ。

07年のアルセロール・ミタル発足後、日鉄は旧アルセロールとの関係を引き継ぐ形で、ミタルと提携した。最重要顧客である自動車会社への供給を優先したためで、北米では今回売却する工場を軸に関係を続けてきた。

それでも当時の時価総額が2倍近かったミタルによる買収リスクは残った。仮に敵対することになっても世界市場で戦う布陣を整えるため、ブラジルの出資先の能力拡張を計画するなど万が一の事態に備えていた。

その関係が変わってきた背景には、中国勢の台頭がある。国有企業が相次ぐ再編と設備投資で巨大化し、世界の粗鋼生産に占める比率は00年の15%から19年には53%へ拡大。中国勢の生産量次第で原料価格は乱高下し、鋼材が安価にアジアに流れるようになった。

中国企業の増産は日鉄とミタルの収益を圧迫。単独で中国企業に対抗しながらグローバル事業を拡大するのは難しくなった。中国勢への共同での対抗策を象徴するのが、インドでの買収だ。高炉からの一貫製鉄所を手中に収め、中国に次ぐ成長市場となりつつあるインドの旺盛な内需を取り込む。

日鉄は将来、グループ全体の粗鋼生産能力を現在の年7千万トンから1億トンまで引き上げる目標を掲げる。新型コロナウイルスの影響や保護主義の強まりで、鉄鋼市場は各国での地産地消の動きが強まる可能性がある。日鉄の橋本英二社長は「東南アジアでのM&A(合併・買収)も選択肢の一つ」とし、今後はインド以外でも一貫製鉄所の買収に意欲をみせる。

SMBC日興証券の山口敦氏も「ミタルと組んでいることで積極策に打って出ることができる」と関係強化を評価する。収益環境が一段と厳しくなるなか、世界戦略を進めるにはもはや両社の関係は後戻りができないところまで来つつあるようだ。(湯前宗太郎、川上梓)

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