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「鬼滅」ブーム 各地に波及 偽グッズ横行、知財侵害も

専門家「手作りも個人利用で」

大阪税関が輸入を差し止めた「鬼滅の刃」の偽造品(同税関提供)

神社、瓦、ちくわ――。漫画「鬼滅(きめつ)の刃」の人気が社会現象になりつつある中、作品を想起させる名所や商品にも追い風が吹いている。フリーマーケット(フリマ)サイトでの関連グッズ取引も盛んだ。ただ許可を得ずに作られたグッズの販売も横行し、警察が摘発に乗り出す事例も出ている。

多くの鬼滅ファンが訪れる八幡竈門神社(大分県別府市)

「新型コロナウイルス禍で観光客も減っていた。地域のにぎわいに少しでも貢献できればうれしい」。温泉で有名な大分県別府市の「八幡竈門(かまど)神社」の宮司、西本隆秀さんは話す。

作品の主人公「竈門炭治郎」の姓と同じ名称という縁で参拝者が急増。10月末の休日は前年比100倍の約2千人が詰めかけた。拝殿の天井に描かれた竜が主人公の必殺技のイメージに似ていたり、物語に登場する鬼にまつわる伝説があったりと作品との共通点も多く、10月の映画公開後に参拝客が顕著に増えたという。

八幡竈門神社拝殿の天井画。描かれている竜が「鬼滅の刃」に出てくるデザインに似ていると話題だ(大分県別府市)

国の伝統的工芸品「三州鬼瓦工芸品」も"鬼つながり"で注目されている。主な産地の愛知県高浜市では市役所にキャラクターを彫った瓦が展示され、平日も多くのファンが集まる。同市と三州瓦工業協同組合が共同で版元にライセンス料を支払い、企画が実現した。同組合の山本英輔理事長は「この機会に若い人に鬼瓦の伝統を知ってもらいたい」と期待する。

除幕された、「鬼滅の刃」のキャラクターを彫刻した瓦の記念碑を撮影するファン(10月30日、愛知県高浜市)=共同

ブームは食品業界にも波及。水産加工会社、スギヨ(石川県七尾市)は「(キャラクターが口にくわえている)緑の竹筒を子どもがほしがっているので、くわえても大丈夫な緑のちくわを作ってほしい」という客からの要望を受け、製造を決めた。

同社は9月、クラウドファンディングで資金50万円を募集。1口2千円を出資するとちくわ40本が届く。目標を超える約330人から出資があり、約80万円が集まった。担当者は「くわえるだけでなく食べて練り物を好きになってほしい」とも話す。

竹を模した緑のちくわ

ブームの陰で関連グッズを許可なく作成・販売する事件も。京都や秋田などの各府県警は9月、無許可で複製されたキャラクターのフィギュアを販売したとして計8人を著作権法違反の疑いで逮捕した。奈良県警でも摘発事例がある。

大阪税関は2020年1~6月、鬼滅の刃のキャラクターを模したフィギュアなど約1000点の輸入を差し止めた。多くは中国からで、7月以降もペースは落ちない。同税関の担当者は「一作品に関連した品の差し止めがこれほど多いのは珍しい」と驚く。

フリマサイトでも作品をイメージしたアクセサリーや小物などの手作りグッズが多数出品されており、大手のメルカリは9月に対策を強化。商品名にキャラクター名などを記載したり、事務局が特定のブランドを想起すると判断したりした商品は出品禁止とし、違反した場合は削除や利用制限もあり得るとした。

一方、出版元の集英社は6月、作品の主要キャラクター6人が着ている羽織などの柄を商標として出願。中には「市松模様」や「麻の葉模様」など伝統的な柄も含まれており、SNS(交流サイト)などで出願に疑問の声も上がる。

商標登録に詳しい芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士は、登録のハードルは高いとした上で「他の商品と識別できることが認められ、別の企業などから有効な異議がなければ登録される可能性はある」と指摘。出願者は正式登録前でも使用した相手に損害賠償を前提とした警告ができるといい、「キャラクターにちなんだ手作りグッズなども個人的な利用にとどめることが望ましい」と話す。

 ▼鬼滅の刃 週刊少年ジャンプ(集英社)で2016年2月から20年5月まで連載した吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)さん作の漫画。大正時代を舞台に鬼に家族を殺された主人公が、鬼になった妹を人間に戻すため奮闘する。19年のアニメ化を機に人気が高まり、単行本の累計発行部数は1億部(電子版含む)を突破。映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は今年10月16日の公開から10日間で興行収入100億円を超え、異例のヒットを記録している。

鬼滅ネームも人気

「鬼滅の刃」にあやかった名前を付ける人もじわりと増えている。ベビーカレンダー(東京・渋谷)が2020年に生まれた赤ちゃん約16万人の名前を調べたところ、人気キャラクターの剣士、冨岡義勇が使う技の名前「凪(なぎ)」が男の子で昨年の93位から24位に、女の子で55位から27位に上昇した。

「義勇」という男の子は4人、人気キャラの甘露寺蜜璃(みつり)と同じ「みつり」という女の子も7人いた。いずれも昨年はゼロだった。舞台の大正時代にちなんだ「古風で日本的な名前」が増えているといい、「今後も鬼滅ネームが増えそうだ」(同社)とみている。

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