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ランちゃん再び、変わらぬ歌声で魅了

「平成を飛び越え、昭和からやってきた伊藤蘭です」とあいさつした=吉原 朱美撮影

元キャンディーズの「ランちゃん」こと伊藤蘭(65)が再びステージに立った。1978年のキャンディーズ解散以来、41年ぶりにソロ歌手として復帰した2019年の公演に続く全国ツアーの最終公演だ。

「平成を飛び越え、昭和からやってきた伊藤蘭です」と笑顔であいさつ。19年に発表したソロアルバム「My Bouquet(マイ・ブーケ)」の曲に、キャンディーズのヒット曲を交え、19年6月の東京公演を上回る充実したステージになった。

ランちゃんはさっそうと現れた。23歳だったキャンディーズ解散時と変わらぬスリムな姿に改めて驚かされる。遠目には表情も振り付けの動きもほとんど変わらない。本当に65歳なのか。

少し鼻にかかった甘さと、パチンとはじけるような張りを併せ持ったボーカルはキャンディーズのセールスポイントでもあったが、みずみずしさを保っている。年齢を話題にして「今やれることをやっておかないと。私たちには時間がないのよ」とおどけてみせる。ドリフらとコントで共演し、笑いを振りまいていた頃のギャグを交え、歯切れのいいトークも往時のままだ。

中盤は衣装替えして「危ない土曜日」「その気にさせないで」「ハートのエースが出てこない」とキャンディーズのヒット曲を畳みかけた。観客は新型コロナウイルス感染対策でマスクを着用し、歓声を上げられないし、声援も送れないのだが、すさまじい拍手が巻き起こり、色とりどりのケミカルライトが乱舞する。野太い声の「ランちゃーん」の合いの手が空耳のごとく聞こえた気がした。

発売前の新曲「恋するリボルバー」も披露した=吉原 朱美撮影

19年のコンサートよりキャンディーズの曲を増やしたのは、観客が何を求めているかを十分に分かっているからだろう。バックの女性コーラス2人が良い仕事をして、3人の美しいハーモニーを見事に再現していた。

本編のラストは「微笑がえし」。人気絶頂での解散となった当時を思い出す。記者は当時中学生で、キャンディーズの出るテレビやラジオ番組は欠かさずチェックし、なけなしの小遣いを5枚組のLPレコードにつぎ込んだくらいだから、ショックは大きかったし、この曲には特別な思い入れがある。観客それぞれが1970年代にタイムスリップし、若き日の自分に戻っていたに違いない。

10~20代でヒットを飛ばした往年のアイドルが、40~50代になって声の輝きや高音の伸びを失い、かなりキーを下げ、それでも苦しそうに歌う姿を何度も目にしてきた。加齢による肉体の衰えは仕方がない、成熟した味わいを出せばいい……。

しかし、この夜のランちゃんはそんな常識に挑み、剛速球を投げ込んでみせた。アレンジもほぼ原曲のまま。フルコーラスに近い長さで、メロディーを崩さずに歌い切った。アンコールでは12月に配信限定シングルとして発売する新曲「恋するリボルバー」もお披露目して、現役歌手としての現在と未来を見せつけた。グループサウンズ風で、2021年1月に66歳になるランちゃんの新境地といえるだろう。

締めくくりはキャンディーズの最後のアルバム「早春譜」収録の「プリーズ・カム・アゲイン」。スーちゃんこと故・田中好子さんが作詞し、共作ながら作曲も手がけた曲だ。見事な構成だった。10月24日、東京・LINE CUBE SHIBUYA。

(編集委員 吉田俊宏)

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