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孤高の画家、戸嶋靖昌の全貌伝える 秋田市で展示会

肖像画や風景画を中心に、日本国内やスペインを拠点として活動した画家、戸嶋靖昌(1934~2006年)の芸術の全貌と生涯を伝える展覧会が、父祖の地である秋田県立美術館(秋田市)で開かれている(2021年1月10日まで)。透徹したまなざしで生命の根源を見つめた作品とともに、衰えぬ探求心の淵源となった若き日々の遍歴も紹介し、見応えのある展示となっている。

戸嶋は幼少時に父を亡くし、秋田県坊沢村(現北秋田市)で育った。周辺には大湯環状列石など縄文時代の遺跡があり、戸嶋も狩猟・採集を主とした時代への関心を深めたようだ。展覧会は副題で「縄文の焔と闇」とうたっており、作品にも原始の魂に触発されたごとき活力をふるって、存在や死への不安を克服しようとする格闘の跡が生々しい。

とりわけ、武蔵野美術学校(現武蔵野美術大学)時代から卒業後に描いた裸婦像や森の絵には、抽象と具象、混沌と秩序といった対立を昇華させようとする葛藤が感じられる。血肉を画布にたたきつけたような作品の数々には見る者を圧倒する迫力がある。

1970年の三島由紀夫の自決を機に、戸嶋は名声を得ることのむなしさを感じ、より純粋に芸術を追求しようと、画業の場をスペインへと転じた。慣れ親しんだ秋田や武蔵野とは対照的な風土ながら、歴史の奥行きを感じさせる街のたたずまいや人々の容貌にひかれ、精力的に制作へ打ち込んでいく。背景に沈みこむような曖昧な輪郭を特徴とし、刻々と姿を変える時空の位相の中で、事物が存在することそのものへの哀歓が漂う。

積極的に自らの作品を世に問うたことがほとんどなく、多くの絵画はこれまで一般の目に触れる機会が少なかった。今回は油彩画や彫刻作品約120点のほか、写真や遺品など計200点以上の資料を展示する。本展をきっかけに生涯が広く知られ、孤高の画家への理解が深まることを期待したい。

(毛糠秀樹)

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