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マレーシアの21年予算案、与野党綱引き 否決リスクも

3月の就任以降、ムヒディン首相は脆弱な政権基盤に常に悩まされてきた=ロイター

【シンガポール=中野貴司】マレーシアのムヒディン政権は6日、2021年の予算案を国会に提出した。歳出総額は3225億リンギ(約8兆円)で、前年の予算を2.5%上回った。新型コロナウイルス対策の支出が膨らむ。与党連合は下院の過半数を辛うじて維持しているのが現状だ。仮に国会で否決されれば、内閣退陣や下院の解散、総選挙につながる可能性もある。

ザフルル・アジズ財務相が国会で発表した。マレーシアの予算年度は暦年と同じ1月からの12カ月間。

21年予算案では、国内総生産(GDP)比の財政赤字が5.4%に達する。20年(6%)に続く高水準で、2.9%まで改善した17年より財政は大幅に悪化する。当面は財政出動で景気を支え、22年以降は財政赤字を段階的に減らす方針だ。

政権は新型コロナ対応のためにも速やかな成立が必要だと指摘し、野党連合に協力を求めた。だが、野党側は「失業者や社会的弱者への支援拡大など提案した6項目の全てが盛り込まれなければ、協力しない」(民主行動党のリム・グアンエン書記長)姿勢だ。野党側が与党や独立系の議員の一部を取り込み、否決に追い込むリスクは残る。

マハティール前首相が突然辞任し、3月に後任となったムヒディン氏の政治基盤は脆弱だ。与党側は7月、下院議長差し替えの動議を提出したが、賛成が111票、反対が109票で、わずか2票差での可決だった。

野党連合を率いるアンワル元副首相が9月下旬の記者会見で「連邦議会下院議員の過半数の支持を確保した」と述べ、即時の政権交代を求めると、与党連合内の主導権争いが激しくなった。政権がいつ崩壊してもおかしくない不安定な状況がなお続いている。

ムヒディン氏は事態打開のため、アブドラ国王に非常事態宣言の発令を要請する「奇策」に出た。新型コロナ対応が名目だったが、真の目的は国会の審議なしに21年予算を成立できるようにすることだったとされる。

国王はムヒディン氏の要請を退ける一方、国会議員には21年予算案を強く支持するよう忠告した。国民の間で知名度が高い国王の発言は、与野党の議員が反対をためらう要因になる。ムヒディン氏には追い風だが、国王の忠告に拘束力はない。実際に下院で可決できるかどうかは不透明だ。予算案の否決は内閣不信任に近い意味を持つ。実際に否決されれば、ムヒディン内閣が退陣に追い込まれる可能性は残る。

一方、21年予算が成立しても、与党連合は過半数ぎりぎりのままだ。ムヒディン氏は4日、地元メディアに「新型コロナと経済の状況が落ち着けば、国民から新たな負託を得たい」と発言し、総選挙を実施できる環境が整った段階で解散を検討する考えを示した。

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