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HISTORY星野佳路氏(14)スキー場再生、現場奮闘

星野リゾート代表

NIKKEI MJ

2001年の「リゾナーレ八ケ岳」に続き、スキーリゾートの運営に取り組むことになりました。03年の「アルツ磐梯」(福島県磐梯町)と04年の「トマム」(北海道占冠村)です。当初は軽井沢の再開発を完成させた後、そこを見本に外部の運営に乗り出すつもりでしたが、各地で施設の再生案件が進み順番が想定と変わってしまったのです。

私は年間60日間をスキーにあてるほどスキーが好きです。再生が必要なスキー場の問題点は明快で、まずリフトがあるべきところにかかっていないのです。麓に近いリフトが旧式のまま更新されず、利用者の少ない場所に最新の高速リフトを増設した例などをしばしば見かけます。

山、リフト、宿泊施設などの所有者が分かれていることもあり、正しい投資やマーケティングが行われていないのです。アルツとトマムは同じ会社がリフトやホテルなどを所有していることから再生できると見込み、引き受けました。

アルツ磐梯はもともと1992年に開業したものの02年に当時の運営会社が民事再生法を申請し、私たちの運営に移りました。現地ですぐに気づいたのは、規模は大きいがコンセプトが明確ではない点です。ここへ来てもらう動機づけが乏しいのです。

私たちはターゲットを小さいお子様を持つ家族層に定めました。ご両親の多くは1980年代後半のスキーブームを経験していますが、お子様ができてからやめてしまう方が多くいます。リフトの待ち時間が長いなど施設が貧弱で食事もいまひとつだった思い出があるからです。私たちはカレーに「おいしさ保証」を付け、味に不満足なら返金する仕組みを採り入れました。技術を磨きたい方も多いとわかったのでレッスンを創設し、こちらも満足できなければ授業料を返金すると決めました。

リゾナーレトマムの「雲海テラス」は現場スタッフの発案で始めた

一方で割引券の乱発はやめました。こうして目標通り3年で黒字を達成し、課題のリフトも使いやすいよう更新を進めました。古い施設のままリフト利用料や土地の値上がりで利益を出すスキー場ではなく、顧客満足度の高いスキーリゾートに転換したのです。

トマムは83年に「アルファリゾート・トマム」の名で開業した施設ですが、運営会社の破綻などを受けて引き継ぎました。ここでは冬の集客だけに頼らず、春夏秋の「グリーンシーズン」の魅力をきちんとアピールすれば経営は安定するだろうと考えました。

スキー用ゴンドラの整備担当者の発案で06年に始めたのが「雲海テラス」です。春から秋の早朝、日によって標高1000メートルの場所から眼下に雲海が広がる風景を眺められるのです。スタッフには見慣れた風景だったそうですが、組織のフラット化や情報共有を進めた結果、「この風景をお客様にも見ていただきたい」と提案があり実現したのです。カフェや空中通路などを順次増設し、18年には累計の来場者が100万人を超えました。

トマムではリゾート開発前に農業が営まれていた歴史を踏まえ、この土地が本来持っていた美しい風景を楽しんでもらおうと「ファームエリア」も作りました。ヤギや羊とふれあい、牧草のベッドで寝転ぶという体験も楽しめます。

顧客調査、脱・価格競争、現場のアイデア、エリアの持つ風景や歴史など、星野リゾートの強みが結果に結びついたといえます。

[日経MJ]

(1軒の旅館を全国チェーンに成長させた星野佳路氏の半生を毎週金曜に掲載します)

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