故郷の言葉 小説家 小山田浩子
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夏が始まるころ、古そうな個人商店で買い物をした。店内には大きな蚊が複数入りこんでいるようだった。戸口は開け放たれ、レジの奥で扇風機が回っている。蚊を気にしながら応対してくれた年配の女性は広島弁ではない方言を話した。語彙や語尾というよりイントネーションが違う。いくらここが広島の田舎だと言ったって、普通に標準語を話す人もいるし、要はみんながみんな広島弁なわけでもない。が、彼女の口調が気になったのは、そ...
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