/

新大関の正代、心の成長で飛躍

8日に初日を迎える大相撲11月場所(両国国技館)に新大関として臨む正代に大きな注目が集まっている。突き押しの貴景勝、四つ相撲の朝乃山とはタイプが違う看板力士として、個性をぶつけ合いながら横綱を目指してしのぎを削ってもらいたい。性格も他の2大関とは異なる面があるようだが、周囲には見せない熱い思いが飛躍につながったのではないだろうか。

前に出る攻めの相撲が正代の大関昇進をたぐり寄せた(代表撮影)

3大関では最年長の29歳

最近の相撲内容をみると、なんといっても力強さが出てきた。フワフワした感じがなくなり、攻めが厳しくなっている。前に出られる相撲が増えているので、強さも安定してきた。守りではなく、攻めの相撲に徹しているのが良い方向に出ている。これを続けていかなければいけない。

何より大きく成長したと感じるのは精神面で、怖々と相撲を取ることがなくなった。以前は少し気持ちが弱いというか、特に白鵬との対戦では「怖がっているな」というのが伝わってくるほどだった。場所前の出稽古などでよく胸を借り、力を見せつけられていたことも影響していたのだろう。立ち合いで顔を張られるのを怖がるような部分もあった。ただ、前に出る相撲が取れれば張られても効かない。10月の合同稽古では白鵬にほとんど勝てなかったようだが、まだ稽古のための体づくりの時期だから参考にはならない。成長ぶりを示す意味でも、本場所での対戦は面白くなるのではないか。

24歳の貴景勝、26歳の朝乃山に対して正代は29歳で、3大関の中では最年長だ。力士として今が一番いい時期だが、逆にいえば旬の時間はそう長くない。30代になると調整方法も変わってくるし、そこから成長することもなかなかない。さらに上を目指していくためには、ここから2、3年で勝負を懸けてやる必要があるということだ。

本人はあまり大きなことをいうタイプではなく、横綱への意欲や他の大関へのライバル心もなかなか口にしない。控えめな性格なのかもしれないが、実際の心の中はわからない。表に出さないだけで、内に秘めた思いはきっとあるはずだ。そうでなければ大関には上がれないし、これだけ急に相撲内容が良くなることもなかっただろう。

年下力士に番付で抜かれ、発奮

人が殻を破って大きく成長するときには、必ずきっかけがある。正代の場合、大器といわれながらずっと伸び悩んでいるうちに年下の貴景勝や朝乃山に追い抜かれ、大関に上がる姿を見せられた。それで何くそと思って頑張った面もあるのではないか。あるいは自分でも気づかないうちに刺激を受けて稽古に身が入るようになったのかもしれない。

正代(右)の昇進で先輩大関の貴景勝らも刺激を受けている=共同

私も現役時代、そんなにはっきりと口にすることはなかったけれど、同じ大関だった武双山や千代大海、栃東に対して負けていられないという思いがあった。彼らの方が活躍していれば、「俺は何をやっているんだろう」「あいつも頑張っているから俺も頑張らなきゃ」と発奮材料にしたものだ。だから負けたときは余計に悔しかったし、どんな形でも勝ってやるぞという気持ちになった。番付上位にいけばいくほどそういう意識は強くなるものだし、そんな存在が周りにいるかどうかで大きく変わってくる。

正代が控えめな言動を貫いているのは、あまり自分にプレッシャーをかけたくないという思いもあるのだろう。優勝争いに絡んだ今年の初場所や7月場所の際に地元の熊本が大いに盛り上がって、結局は賜杯に届かなかったということも影響しているのかもしれない。これまでは地元の声が自分の耳に届くことは少なかったと思うが、様子を伝えるテレビの映像などで見て、こんなに応援してもらっていたのかと実感したはずだ。その期待に応えて優勝できればいいが、できなければ申し訳ない気持ちにもなる。

結果を出したからこその地元の応援

周囲の応援は本当に心の支えになる。けがをしたときや精神的に落ち込んでいるときも、応援してくれる人たちがいるというだけで、まだまだ頑張らなければという気持ちになる。私も九州場所の前には地元の福岡県直方市で激励会を開いてもらい、1000人もの人たちが集まってくれることもあった。それは自分にとって大きな力になった。

正代が応援してもらえるのも相撲で結果を残したから。ありがたいと思って励みにすることだ。ファンのことを考えすぎて相撲が取れないようでは話にならないが、そんな人たちがいることだけは忘れず、プレッシャーにならない程度に頭の隅に入れておけばいい。あとは土俵に集中して、大関として立派に務めてほしい。

(元大関魁皇)

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン