/

世論分断、コロナ下の政治空白 市場に混迷リスク

【ワシントン=河浪武史】3日投開票の米大統領選は、大半の州で開票作業が峠を越えた。現職のトランプ氏(共和)への支持は根強く、新型コロナウイルス対策の不備を指摘したバイデン前副大統領(民主)との接戦が続く。選挙戦が最終的に決着するまで時間がかかり、政治空白が生じれば、米経済の波乱要因になりかねない。

ブッシュ氏(第43代大統領、共和)とゴア氏(民主)が競り合った2000年の大統領選は結果が1カ月半も決まらず、ダウ工業株30種平均は選挙後1カ月で一時5%も下落した。

今回は、そもそも新型コロナで先行き不安が強い。政治の混乱で投資家心理が一段と悪化すれば、株安やドル安が一時的に進む可能性がある。

金融市場はバイデン氏が大統領選に勝利し、民主党が上下両院を制する「ブルーウエーブ」を想定してきた。民主党は2兆~3兆ドル(210兆~315兆円)規模の巨額の追加コロナ対策を提案しており、早期の財政出動にも強い期待がある。共和党は上院選でも健闘しており、市場は21年以降の政策見通しの修正を迫られかねない。

米大統領選は世論を完全に分断したが、トランプ氏とバイデン氏はそもそも経済政策が正反対だ。バイデン氏は再生エネルギーやインフラなどに4年で2兆ドルを投じると公約する。社会保障費の積み増しなども合わせれば、歳出増は10年で10兆ドル規模とも試算される。実現すれば財政悪化と景気期待が相まって、長期金利には上昇圧力がかかることになる。

同氏の経済政策は所得格差の是正を目的としており、財源は企業や富裕層への大型増税だ。増税額は10年で4兆ドル超と試算され、税制改革の規模は同1.5兆ドルだった「トランプ減税」の3倍近い。株式や不動産取引への課税強化も計画し、制度設計次第では市場への影響が避けられない。

逆にトランプ氏は労使が負担する給与税の引き下げなど「減税第2弾」を公約してきた。1期目には実現しなかったインフラ投資も検討しており、追加減税の規模は10年で1.7兆ドル、公共投資は同2.7兆ドルと試算される。中国から生産拠点を米国に戻した企業を税優遇する異端の「メード・イン・アメリカ減税」も打ち出している。

市場の波乱要素となるのは、トランプ氏が再選すれば強硬的な対外政策が続くとみられることだ。中国との関税合戦は一時的な休戦状態にあるが、2期目に収束する道筋は全くみえない。ハイテク分野の覇権争いも強まり、米中の亀裂は世界経済の長期的な成長期待を損ないかねない。

巨大IT(情報技術)企業への規制強化も焦点だ。トランプ政権下では、米司法省が反トラスト法(独占禁止法)に違反しているとしてグーグルを提訴したばかりだ。民主党はフェイスブックやグーグルなどの事業分割も視野に入れる。ホワイトハウスと米議会の勢力図次第では、巨大IT企業に強い逆風が吹く。

市場はバイデン氏が選挙戦を有利に進めてきたとみていた。格差是正を求める中低所得層だけでなく、ウォール街も同氏を支持。証券・投資業界からの献金額は7400万ドルと対トランプ氏の4倍強にのぼった。トランプ氏は大型減税などを実現したが、経済界の多くは同氏の予測不能な政策運営ではなく、バイデン氏による安定した政治体制をのぞんできた。

それでも、製造業の労働者らトランプ氏の岩盤支持層は分厚い。中国への制裁関税やパリ協定からの離脱など、トランプ氏は過激な公約を徹底して実行し、熱狂的な支持者の期待に応えてきた。オバマ前政権下の8年間で製造業の雇用は19万人減少したが、トランプ政権下ではコロナ危機前までの3年で48万人分も増加。対中貿易赤字も19年は縮小に転じている。

米経済は3兆ドルの経済対策で持ち直しに向かっている。9月の米世論調査では、有権者の56%が「この4年で暮らし向きが改善した」と回答。失業などのリスクをひとまず免れた中高所得層には、経済面での決定的な不満は広がっていない。

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

日経電子版の「アメリカ大統領選挙2020」はアメリカ大統領選挙のニュースを一覧できます。データや分析に基づいて米国の政治、経済、社会などに走る分断の実相に迫りつつ、大統領選の行方を追いかけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン