/

中小の無形資産を一括で担保に 金融庁、融資改革で支援

金融庁は4日、銀行による中小企業の事業支援を促す融資改革の議論を始めた。不動産担保や経営者の個人保証に偏った融資慣行を見直し、企業の技術や顧客基盤など無形資産を一括で担保にできる制度づくりをめざす。銀行が企業の将来性を評価して資金を出しやすくすることで、新型コロナウイルスの感染拡大で苦境にある地方経済の再生を後押しする。

金融庁は4日に開いた研究会の初会合で新たな担保制度に関する論点を示した。制度改正の方向性を盛り込んだ報告書を年内にもまとめる。法務省の意見を踏まえ、2021年に法制審議会(法相の諮問機関)で民法改正を検討する。

日本の中堅・中小企業に対する銀行融資の多くは、土地や建物など不動産担保や経営者保証を個別にとることを重視し、企業の事業価値を評価していないと指摘されてきた。将来有望な企業でも担保がないために融資できず、事業拡大に必要となるリスクマネーを供給する手段が乏しかった。貸し手が借り手を選別する慣行は「金融排除」とも呼ばれた。

新たな仕組みでは、企業独自の技術やノウハウといった無形資産を含む事業全体の価値に包括的に担保権を設定できるようにする。これまでも特許権などの無形資産に個別に担保権を設定することはできたが、価値判断が難しいなどの問題で浸透していなかった。4日の初会合では「事業者を支えるための資金調達の選択肢が増えるのは望ましい」(日本商工会議所)など新制度に期待する声が多かったという。

金融庁がこの時期に研究会を立ち上げたのは、コロナ禍で打撃を受けた中小企業に対して資金供給の手段を広げる狙いもある。現状ではコロナ禍で一時的に業績が悪化した場合、将来性があっても担保として差し入れる不動産がないと事業の継続が困難になる恐れがある。

事業全体を担保にすれば、銀行にとっても融資先を再生させることが自らの利益となるため支援に前向きになる可能性がある。不動産担保のように自らの担保さえ回収できれば、損失を免れるわけではない。企業の事業進捗をきめ細かく確認し、経営悪化を防ぐ動機が生まれ、貸し倒れによる信用コストを減らす効果も期待される。

ただ、事業全体の価値に包括的に担保権を設定するためには、これまで以上に銀行の「目利き力」が問われる。事業全体を営業譲渡のような形で売却することは容易ではなく、リスクに見合った適切な金利の設定も課題だ。企業の経営を改善する「支援力」を高める必要もある。

研究会の参加者からは「融資制度を見直しても金融機関のノウハウが十分ではない」との指摘も出たという。金融庁幹部は「企業と密接な関係を築いてきた銀行ほど優位になる」と話す。

海外では米国やカナダ、オーストラリアなどが同様の制度を採用している。米国の創業期の企業は、投資家による出資と銀行融資を組み合わせて資金調達するのが一般的だ。こうした融資では包括的な担保権を活用するケースが多い。

世界銀行によると、20年の事業環境ランキングの融資分野で日本は190カ国中94位にとどまった。担保権の問題も低評価に影響しているとみられる。コロナ禍をテコに金融排除という長年の問題を解決できるのか。銀行界は大きな改革を迫られる。

すべての記事が読み放題
まずは無料体験(初回1カ月)

関連企業・業界

業界:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン