持ちやすいPixel、機能のiPhone 最新5Gスマホ比較
佐野正弘のモバイル最前線

米Google(グーグル)と米Apple(アップル)は10月、次世代通信規格「5G」に対応した新しいスマートフォンを相次いで発売した。グーグルの「Pixel 5」とアップルの「iPhone 12」である。「Android」と「iOS」という2大スマホ向けOSを手がけるライバル2社の最新モデルには、どのような違いがあるのだろうか。本体デザイン、カメラ、性能、そして価格などを比較してみよう。
持ちやすさはPixel 5、高級感はiPhone 12
まずは本体デザイン。Pixel 5は6.0インチのディスプレーを搭載し、サイズは幅70.4×高さ144.7×厚さ8.0ミリ、重さ151グラム。一方のiPhone 12は6.1インチのディスプレーを搭載し、サイズは同71.5×146.7×7.4ミリ、重さ162グラムとなる。
数値だけ見るとiPhone 12のほうが、ディスプレーが若干大きく、少しだけ薄い。だが実際に手にした印象ではPixel 5のほうが持ちやすく、ディスプレーもやや大きく感じる。
Pixel 5のほうが持ちやすいのは、側面に丸みのあるデザインを採用しているためだろう。iPhone 12が角ばったデザインに変更されたため、厚さが直接手に伝わるようになった。ただiPhone 4やiPhone 5時代の角ばったデザインが好みという人も少なからずいるので、この辺りは好みで評価が分かれるところだろう。
数値的には劣るPixel 5のディスプレーのほうが大きく感じるのは、フロントカメラ部分をくりぬいたパンチホール構造を採用しており、画面占有率が高いからだ。iPhone 12は顔認証システム「Face ID」対応のため、ディスプレー上部のノッチ部分が大きく目立ち、画面占有率を下げている。

本体背面の素材には、Pixel 5がアルミニウム、iPhone 12がガラス素材を採用している。こちらも好みで評価が分かれる部分であるが、筆者としてはiPhone 12のほうが高級感があると感じた。またPixel 5は背面に指紋センサーを搭載しており、デザイン的に古さを感じてしまうことから、ここはiPhone 12に軍配を上げたい。
ただコロナ禍でマスクをする機会が多い現状、Face IDによる顔認証しか搭載していないiPhone 12は不便に感じるシーンが多くなっていることも事実。機能だけを考えるならば、指紋認証を採用したPixel 5のほうがメリットは大きいだろう。ただ、どちらもディスプレー素材に有機ELを採用しているのだから、他のメーカーで採用が進んでいるディスプレー内蔵型の指紋センサーを搭載してほしかったというのが正直なところだ。

本体カラーはPixel 5が2色、iPhone 12が5色。しかもiPhone 12のほうが全体的にカラフルで映える印象があるだけに、カラーに関してはiPhone 12が優位といえよう。
両機種ともAI処理で高度な撮影に対応
続いて、両社が力を入れているカメラを確認してみよう。背面のメインカメラはPixel 5が1220万画素/F値1.7の広角カメラと、1600万画素/F値2.2の超広角カメラの2眼構成である。これに対してiPhone 12も、1200万画素/F値1.6の広角カメラと1200万画素/F値2.4の超広角カメラの2眼構成となっている。

どちらの機種もカメラ自体の性能だけでなく、人工知能(AI)技術などコンピューターによる画像処理を積極活用することで、簡単にきれいな写真を撮影できるよう力を入れている。どちらも逆光や夜景など、撮影が難しいシーンをきれいに撮影できる機能を搭載しており、これまでのスマホより幅広いシーンに対応できるようになったと感じる。


超広角カメラの視野角は、Pixel 5が107度であるのに対し、iPhone 12は120度と広い。どちらも超広角カメラにありがちな周辺部のゆがみは少ないので、より広い範囲を撮影できるという点ではiPhone 12のほうが優れている。


一方、Pixel 5のほうが優れているのはズーム撮影である。Pixel 5はAI技術を活用し、最大7倍のデジタルズームでも画質の劣化を抑えて撮影できることが特徴の一つとなっており、同種の機能がないiPhone 12と比べ優位性を感じる。



前面のフロントカメラに関しては、Pixel 5が800万画素/F値2.0、iPhone 12が1200万画素/F値2.2と、iPhone 12のほうが画素数が大きい。どちらもポートレートや夜景など、幅広いシーンの撮影に対応できるモードを備える点は共通している。
一つ大きな違いを挙げるなら、iPhone 12はポートレート撮影時にポートレートライト(ライティング)をリアルタイムに調整できるのに対し、Pixel 5はポートレートライトの変更は撮影後にする必要がある点だ。ひと手間かかるが、その分より細かい調整ができる。自分撮りにこだわる人はPixel 5、手軽さ重視ならiPhone 12といえそうだ。
性能ならiPhone 12、Pixel 5は価格重視
デザインやカメラ性能では甲乙つけがたい両機種だが、チップセットなどの性能では大きな差がある。iPhone 12は、上位モデルの「iPhone 12 Pro」も搭載しているアップルの最新チップセット「A14 Bionic」を搭載しており、その性能は非常に高い。これに対し、Pixel 5は、A14 Bionicの直接的な競合となる米クアルコムのハイエンド向けチップセット「Snapdragon 865」ではなく、それより1つ下のクラスとなる「Snapdragon 765G」を搭載している。
実際、3次元(3D)グラフィックをふんだんに活用するなど、高い性能を求めるゲームで確認してみると、その違いは顕著になる。ゲームに強いこだわりを持つ人など、スマホに高い性能を求めるならばiPhone 12のほうが満足度が高いだろう。


ただ、その性能差は値段の違いにダイレクトに影響している。Pixel 5はストレージが128ギガバイト(ギガは10億、GB)のモデルだけで、価格は税込み7万4800円(公式オンラインストアの販売価格、以下同)。だがiPhone 12は最も安いストレージが64GBのモデルで価格が税別8万5800円(税込みだと9万4380円)、Pixel 5と同じ128GBのモデルは同9万800円(同9万9880円)と、税込み価格で2万5080円の差がある。
とはいえどちらの機種も、これだけの性能を備えていれば、スマホを日常利用する分には十分なことは確か。IP68準拠の防水・防じん性能を備える点や、FeliCa搭載で「Suica(スイカ)」などの電子マネーが利用できる点は両機種とも共通していることから、どちらを購入しても安心して使える点は変わらない。
ともにOSを開発しているメーカーが提供するスマホだけあって、OSやセキュリティーのアップデートが保証されている点も重要だ。実際、Pixel 5は最低3年間のOSアップデートを保証している。iPhone 12は具体的なアップデート保証年数は明言していないが、これまでの傾向からは、4~5年は最新OSにアップデートできる可能性が高い。両機種とも長く安心して使えるだろう。
注目の5G、Pixel 5はドコモでの利用に注意
最後にもう一つ、現在注目を集める5Gの対応状況も確認しておこう。両機種はともに5G対応を前面に押し出しているが、カバーする周波数帯はいずれも「サブ6」と呼ばれる6ギガヘルツ(GHz)以下の帯域のみ。対応する周波数帯(バンド)はPixel 5が9つ、iPhone 12は18とやや差があるように見える。
ただ国内で5Gを利用する上で重要なのは、5G向けとして国内の各携帯事業者に免許が割り当てられた3.7GHz帯(n77/n78)と4.5GHz帯(n79)をカバーしているかどうかだ。両機種の対応バンドを比べてみると、Pixel 5は3.7GHz帯の2つのバンドだけに対応する一方、iPhone 12は3つすべてに対応しているようだ。
そう考えるのは、iPhone 12が国内大手3社から販売されるのに対し、Pixel 5はKDDI(au)とソフトバンクからだけの販売で、国内で唯一4.5GHz帯の免許を持つNTTドコモが扱っていないからだ。つまりグーグルの公式オンラインストアでSIMフリー版のPixel 5を購入し、NTTドコモのSIMを挿入して使用する場合は、5Gエリア内でも5Gが使えない可能性があるので、注意が必要だ。
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。
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