ストーカー治療の要請最多 警察庁、19年は824人
ストーカーに対し、警察が医療機関での治療を働き掛けるケースが近年増加し、昨年は全国824人で過去最多になったことが、警察庁への取材で4日までに分かった。
被害防止に加害者対策の重要性が注目され始め、医学的アプローチの有効性が指摘されている。一方で強制力はなく、受診費用もかかるため、実際に受診したのは124人と全体の15%程度にとどまっている点が課題だ。
ストーカー規制法施行から11月で20年。度重なる法改正で厳罰化が進み、全国の警察の取り締まりも強化された。それでも2019年のストーカーに関する警察への相談件数は2万912件と、7年連続で2万件を超えた。被害者の約9割は女性で20~30代が多い。加害者は交際相手と元交際相手が計4割を占める。
警察は16年4月から、再発の恐れがある加害者に受診を働き掛ける取り組みを始めた。同意を得た上で精神科医やカウンセラーに経緯や状況を説明し、医師らが「診察が必要」と判断すれば、治療やカウンセリングに結び付ける。被害者への執着心や支配意識をなくすことが目的だ。
警察庁によると、働き掛けた加害者は16年度、405人。カウントする期間を変更した18年は750人、19年は824人まで増えた。18年は全47都道府県警が治療を働き掛けている。
ただ、受診を拒否した人は19年に635人と、824人の7割強を占めた。理由は費用面のほか「自分には必要ない」「既に治療している」とする回答があった。受診した124人の内訳は治療中が66人、治療中断が38人、治療完了が20人。一方、124人中再びストーカー行為をしたのは10人だった。
受診費用を一部負担する警察もあるが治療を拒まれれば手を出しにくいのが現状だ。警察庁の幹部は取材に「加害者の更生に向け、地域の精神科医とも連携して受診を勧めていきたい」と話している。
〔共同〕