/

Go Toのお得分、実は課税対象 思わぬ負担も

知っ得・お金のトリセツ(29)

世の関心は世紀の米大統領選に集中する中、マネー界における毎年この時期恒例の鉄板ネタといえば節税。もちろん法律のルールに沿った中で、「もう少しで10万円を超える医療費」の戦略的前倒し投入や、もうかった株の利益を圧縮する損益通算など、年内に一手打つだけでお得につながる知恵は多い。いつものラインアップに加えコロナ禍の今年は特に押さえておきたい情報も多い。例えば話題の「Go To キャンペーン」。最近は「Go To トラベル」の大盤振る舞いぶりに批判が高まり対象プランの除外規定や連泊制限が導入されたが、個人による利用も同様。「やり過ぎ」には税金増という落とし穴があるかもしれないことも知っておこう。

お得は「一時所得」

10月から東京発着を加えて本格スタートしたGo To トラベルは1.1兆円の予算を投入する観光関連業の支援策。旅行代金の割引とクーポン配布の合算で、国内旅行の代金が実質半額になる。1泊2万円が上限なので4人家族の場合、1泊最大8万円の補助がでる。これまでは泊数やプラン内容に制限がなかったが、さすがに目に余る使い方があるということで、観光を目的としない旅行を対象から外した上で11月17日以降の予約・販売分について1回の補助対象を7泊までにする規制が導入された。

とはいえ、7泊分でも前述の旅行で得られる「お得」は1人あたり最大14万円、家族でみれば56万円に達する。そしてこのお得分は税の世界では「一時所得」と呼ばれるれっきとした課税対象なのだ。

「Go To+ふるさと納税返礼品」で50万円超なら課税

一時所得とは働いて得たのではない、臨時的・偶発的な所得を指す。クイズの懸賞金や競輪・競馬の払戻金などが代表例で、落とし物を拾った場合もこれに当てはまる。今回のGo Toトラベルやイートも確かに通常の商取引の値引きの範囲を超えた臨時的かつ偶発的なお得といえる。

「他にはふるさと納税の高額返礼品も対象。厳密に言えばGo To トラベルとイートとの合算で50万円超の一時所得があれば確定申告が必要」(柴原一税理士)。税金は特別控除枠50万円を引いた部分にかかるので、全員が直ちに課税されるわけではないが、トラベルとイートを駆使する「Go Toざんまい」の家族などがいれば引っかかる。

仮に税率50%(住民税と合算)の高所得者が100万円のお得を享受すれば、50万を引いた額の半分が課税対象に戻されるので、(100万円-50万円)×2分の1×税率50%で12.5万円の負担増になる。高所得者には痛くもないかもしれないが、「税金を取り戻そう」とばかり多用する極端な使い方にはツケが回るのが税制のスジというわけだ。

行けなかったチケット代で税金圧縮

一方、逆に新型コロナ関連で税負担減につながる対象としては、中止になったイベントや公演などのチケット代がある。払い戻しを受けずに「代金請求権」を放棄すれば、税制上の寄付と見なされ本来払うべき税金が圧縮できる。

対象は2020年2月1日から21年1月31日までに予定されていた文化芸術イベントのうち、主催者が文化庁・スポーツ庁に申請し審査を通った指定行事。文化庁などのサイトなどに対象イベントが載っている。プロセスはやや面倒くさいが、主催者から「払戻請求権放棄証明書」などの書類をもらい確定申告する。(チケット代-2000円)×40%を支払うべき税金から差し引くことができる。1万2000円のチケット代の場合、4000円。金額的メリットはそれほど大きくないかもしれないが、主催者に払い戻しを求める代わり国から税金で返してもらうのは、コロナ禍で苦しむ業界応援という趣旨にかなう。お得な制度は金銭メリットだけでなく、本来の趣旨も踏まえながら利用したいものだ。

山本由里(やまもと・ゆり

1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー編集センターのマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

山本 由里

カバージャンル

  • マーケット
  • 企業業績
  • 資産運用

経歴

1993年入社のアラフィフ。キャッチフレーズは「1円単位の節約から兆円単位のマーケットまで」。証券部を軸足に日経ヴェリタスやテレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」、マネー報道部など一貫してお金周りの記事の執筆・編集・番組制作に携わってきました。ただ、多忙を口実にタクシーを多用するなど自分のお金管理は杜撰。人生100年時代を見据え、蓄えた知識を実践に落とし込んで成果を発信するのが今年の目標です。現職はマネー・エディター

活動実績

                       
2021年5月20日 保健・医療・福祉サービス研究会の月刊誌「Visionと戦略 2021年6月号」でインタビュー掲載
2020年12月18日 福岡日経懇話会で「100年ランの走り方 これからの資産管理術」講演
2020年12月15日~ 日経電子版ニュースをひとこと解説する「日経Think!」のエキスパート(投稿者)を担当
2020年11月30日 YouTube「NIKKEIマネーのまなび」チャンネル出演。社労士の井戸美枝氏と「将来もらえる年金を2000万円増やす方法」対談
2020年11月21日 日経ウーマノミクス・プロジェクトのオンラインセミナー「ジブン流資産形成、はじめませんか」登壇
2020年8月17~21日 日経CNBCの夏休み特別企画「天引きから始めよう」出演
2020年2月18日 日経CNBC「昼エクスプレス」スペシャルトーク出演
2020年2月7日 香川日経懇話会で「人生100年時代に備える資産形成」講演
2020年1月7日 日経CNBC「昼エクスプレス」スペシャルトーク出演
2019年4月~ 電子版有料会員向けニューズレター「NIKKEI Briefing」で執筆メンバーの1人として毎週水曜発信「Women’s Insights」を担当。最新作:人生100年 気になる2つの50%(2020年2月5日)
2019年4月~ BSテレ東「日経プラス10」に解説キャスターとして出演中
  共著に「資産運用大全」「定年ですよ」「これからの人生お金に困らない本」など

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン