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井上尚弥、カウンター鮮やか 本場で本領発揮のKO

7回KOで防衛に成功した井上。左は父の井上真吾トレーナー=Mikey Williams/Top Rank提供

この瞬間を待っていた、そんな井上尚弥の心の叫びが聞こえてきそうな狙い澄ました一撃だった。それまで様子見の風情であまり手を出していなかった7回の終盤、ジェーソン・モロニーが左ジャブからワンツーの右につなげようとした隙を見逃さなかった。顔面を打ち抜いた右ストレートのカウンター。崩れ落ちたモロニーは立ち上がろうとしたが、ダメージが深くカウントアウトされた。

「フィニッシュのパンチはすごく納得のいく形で終わることができた」。現地放送局のインタビューに答える井上にも満足感が漂う。6回に奪った最初のダウンもカウンターによるものだった。左ジャブのダブルに合わせた左フックでそうそう打てる類いのパンチではないが、井上いわく「左も右もモロニー対策で練習してきたパンチでスムーズに出せた」(日本で中継したWOWOWのインタビューから)。

周囲の下馬評をよそに、井上は戦前からモロニーの能力を高く評価していた。「タフで技術もある崩しにくい選手。KOなら前半か中盤だと思う。後半にもつれると精神的な戦いになる」。気を引き締めたのは「勝ち方」にこだわっていたからだ。ボクシングの聖地といわれる米ラスベガスのデビュー戦であり、歴史に残るファイターたちを手掛けてきたトップランク社との契約初戦。KOこそ自らに課したノルマだったのだろう。

モロニー(左)を攻め込む井上=Mikey Williams/Top Rank提供

試合序盤から果敢にパンチを交換したが、パワー、スピードともモロニーと一段違う左ジャブや右ストレート、ボディーで主導権を握った。それでもモロニーも簡単には引き下がらない。「攻めていったけれど、足も上体も動かすのでなかなか当てられない印象があった。中盤からカウンター狙いに切り替えた」という。

5回には相手を誘うようにロープを背負ったりもした。「打ちにいって攻めきれなければ、待つことも練習していた」と井上。「左ジャブもダブルで突っ込んでくる癖もすごく見て勉強していた。思うように(カウンターが)入った」。細心の準備もさることながら、予定調和で終わらない本番のリングで結実させるところが一流の証しだろう。

「モンスター襲来」。井上の異名にちなんだ宣伝文句で、プロモーターは新型コロナウイルス禍で無観客開催となった試合を盛り上げた。この日、米国のファンや関係者は、その言葉の響きとはひと味違う、洗練されたKOアーティストの姿を見たのではないか。

日本を出発する前、井上陣営の大橋秀行会長はこう話していた。「パンチ力(のイメージ)が先行しているけど、尚弥の本当の武器はテクニックとスピード。そういうところが出てくれれば」。本場での一歩を最高の形で踏み出した。

(山口大介)

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