最終盤、「ラストベルト」で攻防 米大統領選

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2020/10/31 22:30
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米大統領選は最終盤に入った=ロイター

米大統領選は最終盤に入った=ロイター

【ワシントン=永沢毅】11月3日に投開票が迫った米大統領選はトランプ大統領と民主党候補のバイデン前副大統領の攻防が最終局面に入った。カギを握るのはラストベルト(さびた工業地帯)の激戦州。「米国第一」で雇用を取り戻したと訴えるトランプ氏と、新型コロナウイルスの感染拡大への無策が雇用を失わせていると批判するバイデン氏が火花を散らす。

前回2016年の大統領選では、ラストベルトの白人労働者の支持を取り付けたことがトランプ氏の勝因になった。

トランプ氏は30日、ラストベルトの一角にある中西部ウィスコンシン州グリーンベイで選挙集会を開いた。「私は雇用を取り戻し続けるが、バイデンはいつも米国の労働者を裏切ってきた」。最初に取り上げたのは、雇用の問題だった。同州の9月の失業率は5.4%で、全米(7.9%)を下回る。

バイデン氏は上院議員や副大統領として、環太平洋経済連携協定(TPP)やメキシコ、カナダとの自由貿易協定(FTA)を推進した。その政策が米国から雇用を流出させたと決めつけ、大統領にふさわしくないと印象づけようとした。

バイデン氏はその数時間後、同州ミルウォーキーの空港で開いた少人数の集会でトランプ氏に応戦した。「ウィスコンシンは2万人もの製造業の雇用が失われた」。トランプ氏の新型コロナ対応が拙劣なため、雇用が打撃を受けたと攻撃した。同州の新型コロナの新規感染者は1カ月前の2倍近くに急増しており、トランプ氏のコロナ対策の「無策」ぶりをやり玉に挙げた。

自動車や鉄鋼、造船など米国の製造業が集積するラストベルト。この中で大統領選の激戦州として注目されるウィスコンシン、東部ペンシルベニア、中西部ミシガンの3州は2016年大統領選でいずれもトランプ氏が僅差で制し、大統領就任の原動力となった。

今回も勝利に不可欠とみるトランプ氏は現時点で30日以降に予定する17の選挙集会のうち、13をラストベルトを含む中西部に集中させる。バイデン氏も6つの全ての行事を中西部で開く計画だ。31日にはオバマ前大統領とそろい踏みで初めて開く対面式イベントの場所にミシガン州を選んだ。

ウィスコンシン州の訪問もバイデン氏は3回目だ。16年に民主党候補のクリントン元国務長官は一度も訪れず、予想外の敗北を喫した。1988年以降の大統領選で民主党候補が負けていなかったとの油断からで、今回はその反省がある。

両候補がラストベルトを意識して訴える政策はいずれも保護主義的な色彩をまとう。バイデン氏は国外生産品の米国内での収益に課税する「懲罰税」を掲げ、企業の米国生産への税控除を打ち出す。連邦政府が米国製品を大量購入する「バイ・アメリカン」では、政府が4年で4000億ドル(約41.8兆円)の調達費用を出す。

トランプ氏も中国から雇用や生産拠点を米国に戻した企業に税優遇を与える「脱中国」の税制を唱える。労働者の保護をめざす異色の税制で足並みをそろえることが、ラストベルトの重要性を象徴する。

政治専門サイトのリアル・クリア・ポリティクスがまとめた各種調査を平均した支持率ではバイデン氏のトランプ氏に対するリードは7.9ポイントあるが、中西部ではオハイオ州で横並び、アイオワ州で1.2ポイントにとどまるなど接戦が目立つ。

しかし、これまでトランプ氏が強みとしてきた非大卒の有権者が離反している兆しもある。米紙ワシントン・ポストの最新の世論調査によると、ウィスコンシン州での非大卒の有権者ではバイデン氏への支持率(49%)がトランプ氏(48%)を上回った。新型コロナに端を発する雇用情勢の悪化に不満を強めている可能性がある。

■ラストベルト
米国の中西部にある五大湖周辺に位置する、石炭、鉄鋼、自動車といった旧来の産業の衰退が進む地域の呼称。英語の「ラスト(rust)」は「さび」を意味し、使われなくなった工場や機械を表す。「ベルト(belt)」は「地帯」のことだ。ウィスコンシン州、ミシガン州、オハイオ州、ペンシルベニア州などが含まれる。経済のグローバル化が進むにつれ、価格競争力の観点で工場の海外移転が進んだことが衰退の背景にある。

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