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スキルアップで年収増へ 教育訓練の公的制度フル活用

Dr.マネーお悩み外来 Vol.14

お金の悩みは千差万別。でも、ご安心ください。解決策は必ずあります。「Dr.マネーお悩み外来」ではあなたが悩みを解決し、上手にお金と付き合ってより豊かな人生が送れるようにお手伝いします。

Case8: 本日のご相談は、契約社員Hさん(41歳、女性)です。いわゆる就職氷河期世代で、新卒の時に就活に難航し苦労して就職しましたが、結局2年ほどでやめました。それ以降、非正規の契約社員として働いています。現在年収は約300万円で父親(65歳)、母親(62歳)と同居しています。

Hさん 人生100年時代といわれるのでこれから長く働かなければならないと思っています。親も年をとっていきますし、老後のことを考えると不安です。一貫したキャリアもありません。今後どのようにマネープランを考えていけばよいのでしょう。

白鳥 2019年6月に、国や地方自治体が就職支援をし、企業の採用を促し取り組むという「就職氷河期世代支援プログラム」が打ち出されました。しかし、このコロナ禍で就職状況は厳しさを増したようで残念です。でも、人生100年とすれば41歳のHさんがこれからキャリアをデザインしていくことは十分可能ですし、長い人生を不安なく幸せに生きられるように、今しっかりライフプランを考えたいですね。

例えば、社会福祉士や看護師などの国家資格を取得することで、これまでのキャリアに関係なく正社員として働く道が開けます。キャリア形成を考える上で、利用できる制度もありますよ。

「専門実践教育訓練給付金制度」は中長期的なキャリア形成をサポートし、雇用の安定を図ることを目的としたもので、一言でいえば指定された教育訓練を受講し終了した場合、要した費用が戻ってくるものです。

現在在職中で雇用保険に3年以上(初回利用時は2年以上)に入っている人(一般被保険者又は高年齢被保険者)、もしくは離職後1年以内の人などが厚生労働大臣の指定を受けた講座の受講を開始し終了すると、受講した際に支払った費用(入学金・授業料)の最大50%(年間上限40万円)が支給されるます。

さらに受講を修了した後、資格を取得し1年以内に雇用される、またはすでに雇用されていれば、支払った費用の最大20%(年間上限16万円)が追加支給されます。最大3年間で120万円、追加給付を入れると168万円(長期専門実践教育訓練は4年間でそれぞれ160万円、224万円)が受給可能です。

受給するには、受講開始前にキャリアコンサルタントによる「訓練前キャリアコンサルティング」を受け、就業の目標、職業能力の開発・向上に関する事項を記載した「ジョブ・カード」を作成します。

受講期間中の生活を支援してくれる「教育訓練支援給付金」という制度もあります。2022年3月31日までの暫定措置ですが、若年層の非正規で働いている人を正社員化したいという目的でつくられた制度です。

45歳未満で失業中であり、昼間部の通学講座に通っていることなどを条件に、基本手当がなくなったあと、所得保障のための給付(基本手当の80%)が訓練終了までずっと受け取れます。

さて、3年間の専門実践教育訓練を終えて就職したとして、いくつかのマネープランのシミュレーションをしてみましょう。

Hさんの「ねんきん定期便」によると、現時点での公的年金の受給額は65万円です。今後、働き続けることで年金を増やしていくことができます。現在の生活費をベースに老後生活費をイメージしてみましょう。今の生活費の6~7割くらいで生活するとして試算します。

もちろん、これからどう人生が変わるかはわかりませんのでライフプランの変更に応じて考え直すことを前提にしています。

手取りの20%前後を貯蓄するとして、働き方によって老後生活費がどう変わるかをみてみます。「人生設計の基本公式」に入れる現在資産額(A)は0円、現役年数(a)は44歳で再就職し65歳まで働くとして21年、老後年数(b)は95歳まで生きるとして30年とします。

厚生老齢年金額は簡易的に「ねんきん定期便の金額+今後働く年数×平均年収×0.0055」として計算しました。基礎年金額は約78万円として合計しています。

それぞれ、算出した必要貯蓄率を守れば、老後の生活費がいくら見込めるかをご覧ください。

    「人生設計の基本公式」についてはこちらをご覧ください。

今後、キャリアを積み上げて資産形成していけば、将来はこのくらいの生活が送れるという長期的なライフプランのイメージを持つことで、先の見えない不安も和らぐのではないでしょうか。

長く働くとともにキャリアアップを図り、賃金の上昇も期待できるとなおいいと思います。日本の公的年金保険は賃金が増えればその分、支払う保険料も増えますが、同時に将来受け取る年金額も増やせます。就労を促すことで老後の安心をつくっていこうという制度です。安定的な老後を送るためには公的年金を増やすと同時に、自助努力も必要です。資産形成は個人型確定拠出年金(イデコ)やつみたてNISAも使って合理的に行いましょう。

氷河期世代に限らず、転職を繰り返していると退職金が少ない、または受け取れないという場合もあるでしょう。なるべく早いうちに、自分のキャリアに向き合い、長期的なライフプランニングに取り組むことが大切です。

それでは本日の処方箋です。

◇  ◇  ◇

・老後の安心をつくるためには、キャリアデザインと資産形成の両方で考えていきましょう。

・人生100年時代、将来の自分の姿をイメージし、なりたい自分になるためにぜひ主体的に行動してみてください。

岩城みずほ(いわき・みずほ)
ファイナンシャルプランナー(CFP)。オフィスベネフィット代表。「金融商品を販売することによるコミッションを得ず、中立的な立場でコンサルティングする」をモットーに、NPO法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」副理事長も務める。著書に『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(日本経済新聞出版社)など。https://www.officebenefit.com/

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