島根原発2・3号機の安全対策工事、後ずれ 中国電力
稼働開始見通せず

広島
中国
環境エネ・素材
2020/10/30 20:00
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中国電力は30日、稼働に向けて国の審査が進む島根原子力発電所2.3号機(松江市)の安全対策工事が遅れそうだと発表した。完了時期はそれぞれ1年遅らせる。同社は国の方針に沿って低効率な石炭火力発電所を段階的に休廃止する方針だが、主力の代替電源となる原発の稼働開始は依然として見通せない。大型な発電所に電源を集中させるリスクも課題として残る。

決算を発表する中国電力の清水希茂社長(30日、広島市)

島根原発2号機の安全対策工事の完了時期はこれまで「2020年度の早いうち」としてきたが、「21年度の早いうち」に見直した。3号機は同「21年度上期」としてきたのを「22年度上期」に変えた。

原子力規制委員会による審査の過程で、発電所を囲む防波壁の強度を高める必要性について指摘があったという。ひび割れの発生などで海水が浸水しないよう、追加で補強工事することになった。安全対策工事の総費用も500億円増やし、計6000億円の見通しに引き上げた。

安全対策工事が終わる時期を見直すのは、8回目。市場では「ほぼ毎年この時期に後ズレについての発表があるため、マーケットは織り込み済み」(国内証券アナリスト)との見方がある。追加の対策工事が終わらないことには原発は動かせないが、稼働に向けた全体のスケジュールが遅れること自体はマーケットにとってさほど驚きはないようだ。

ただ、昨年10月に同様の発表した時より電源を巡る環境は厳しくなっている。今年7月、経済産業省は低効率な石炭火力発電所を段階的に休廃止する方針を示した。菅義偉首相も50年まで温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標を示している。二酸化炭素(CO2)の排出量が多い石炭火力発電所への風当たりは強まっている。

中国電は合計259万キロワットの石炭火力を持っており、20年3月期は販売する電力のうち37%が石炭由来。休廃止を迫られる「旧型」に該当する発電所5基の合計出力は159万キロワットに上る。1キロワット時当たりのCO2排出量(キログラム)を示す「排出係数」が大手電力会社10社の中で、沖縄電力北海道電力に次いで3番目に高い。

清水希茂社長は「新規の電源開発と併せて、発電所はスクラップ・アンド・ビルドしていく方針だ」と話す。実際、22年11月には新型の三隅石炭火力発電所2号機(島根県浜田市、出力100万キロワット)の稼働を控えている。島根原発2.3号機(出力計219万キロワット)の稼働を考慮にいれると、電源のリプレースのめどはたっている。

市場では原発利用率が1%上がると4億円の燃料削減効果があるとの試算もあり、原発の稼働で脱炭素と収益改善が両立できると同社は考えている。一方、「安全性のさらなる向上が必要」(清水社長)で、稼働に向けた道のりは間延びしている。

三隅2号機や島根原発など大型発電所に電源を集中させるリスクも今後の課題として残る。18年9月の北海道胆振東部地震では、大規模な停電(ブラックアウト)が発生した。一因には北海道電力が1カ所の火力発電所への依存度を高くしていたことがある。

災害や設備トラブルに加え、原発に関しては司法が運転停止を求める例もある。清水社長は「他の電力会社と広域で電力を融通し合う仕組みもあるため、ブラックアウトの発生は考えづらい」と話す。ただ、原発を含む主力電源の運転停止は電力大手としての競争力をそぐことにつながりかねない。向こう数年の電源のラインアップがそろっているだけに、電源の大型化に関わる対応策も求められそうだ。

(田口翔一朗)

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