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食品ロス削減道半ば コロナで余剰増、工夫必要

食べられる食品の廃棄を防ぐ食品ロス削減推進法の施行から10月で1年を迎えた。国は30日を「削減の日」と定め、自治体や企業だけでなく、消費者にも行動の変化を求める。新型コロナウイルスの影響で余剰食材が増えるなか、新たな工夫も求められている。

東京都新宿区の書店の軒先に「夜のパン屋さん」が10月、オープンした。開店は毎週木金土曜の午後7時半。ホームレスの自立支援のため雑誌販売の仕事を提供する「ビッグイシュー日本」が運営する。ホームレスが提携するパン販売店に出向いて売れ残りそうになった商品を回収し、値段を付けて販売する。

一連の作業がホームレスの仕事になるだけでなく、食品廃棄を減らす目的もある。仕組みを発案した料理研究家の枝元なほみさんは「食べ物を大量生産して捨てるのではなく、必要な人に届ける循環を作りたい」と話す。

現在は毎回5店ほどから計60~150個程度を仕入れる。近所の女性会社員(54)は「売れ残りと聞いても抵抗感はない」と言い、中学1年の娘(12)は「好きなパンを食べて社会の役に立てるのはうれしい」と喜んだ。

食品ロスが国際的な問題になり、消費者庁は2019年10月に食品ロス削減推進法を施行した。行政には計画の整備、事業者には賞味期限を延ばすなど商習慣の見直しを促した。消費者の役割も明記し、30年度に00年度比で食品ロスを半減する目標を掲げる。

同庁によると、食品ロスは家庭と食品事業者の双方から発生し、00年度は計980万トンだった。減少傾向だが17年度も612万トンあり、国民1人が茶わん1杯のごはんを毎日捨てる計算という。

法施行は自治体の取り組みに追い風となった。横浜市では19年度の家庭からの食品ロスが前年度比10%減の9万4千トンで、統計のある14年度以降最大の減り幅だった。小売店などに適正な在庫の確保を呼びかけてきた同市の担当者は「商品を切らしてはいけないとの考えが薄れ、雰囲気がずいぶん変わった」と話す。

消費者の意識も高まりつつある。消費者庁が全国3千人に行った調査で、「食品ロス削減の取り組みをしている」と答えた人が19年度は77%と、前年度から6ポイント増えた。

大量廃棄が社会問題となった恵方巻きやおせちなど季節商品にも変化があった。ファミリーマートは20年のクリスマスケーキの販売を19年に続いて完全予約制とする。初めて実施した昨年、ケーキ廃棄量は金額ベースで前年比半分に減った。SNS(交流サイト)でも消費者の反応が肯定的で、広報担当者は「廃棄ゼロを目指す姿勢を今後も貫きたい」と話す。

新型コロナに伴うイベント中止や外食産業の不振で未利用の食材は増えている。農林水産省は5月に始めた「#元気いただきますプロジェクト」で、養殖魚や肉など約80品目を対象に通販の送料補助などで販売を促す。担当者は「食材の出口がなく在庫が滞留し、生産者が困っている。廃棄しないですむよう消費を喚起したい」と話す。

国が「食品ロス削減の日」とする30日前後には各地で啓発イベントが相次ぐ。9日にノーベル平和賞の受賞が決まった国連世界食糧計画(WFP)も、途上国の飢餓と先進国の食品ロスには関連があるとして、双方の問題をなくす運動を行う。

東京家政学院大の上村協子教授(生活経済学)は「国連のSDGs(持続可能な開発目標)も後押しし、食品ロス削減推進法の意義が社会に定着した」とこの1年を振り返る。「数値目標の達成だけでなく、食材の生産や流通の過程を知る消費者教育につなげることが大切だ」と話す。

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