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横浜で大岡昇平展 従軍の資料など戦争文学身近に

戦争文学を代表する「野火」、ベストセラーとなった恋愛小説「武蔵野夫人」などで知られる大岡昇平(1909~88年)。この昭和を代表する作家の生涯をたどる「大岡昇平の世界展」が神奈川近代文学館(横浜市)で開かれている(11月29日まで)。文芸評論家の小林秀雄、詩人の中原中也らとの若き日の交流、フィリピン戦線で九死に一生を得た経験などが、いかに大岡文学を生み出したかを、直筆原稿や写真、手紙といった資料を通じて紹介している。

東京の株式仲買店に務める相場師の子として生まれた大岡は文学少年のいとこ、洋吉の影響で多くの本に触れる。展示冒頭の「わが師わが友」のコーナーには、洋吉を回想した「大岡洋吉のこと」という直筆原稿が並ぶ。青山学院中から転校した成城第二中では、美術評論家の富永次郎と知り合い、その兄である富永太郎が残した詩集に触れる。さらにフランス語の家庭教師を務めた小林を通じて、中也や評論家の河上徹太郎らの知遇を得る。会場に展示されている手紙などが交遊を示す。

小林の勧めで書いたのが米軍の捕虜になった経験を基に書いた「俘虜記(ふりょき)」であり、その直筆原稿も並ぶ。「野火」に関しては原稿以外に、フィリピン・レイテ島の地図や日米両軍の動向を手書きした創作メモも出品されている。鉄帽などレイテ島で収集された日本軍の遺品も陳列され、大岡文学の世界がより身近に感じられる。

展覧会の編集委員を務めた評論家の湯川豊氏は図録で「(大岡の多彩な執筆活動には)一本の筋が通っていた。何事に対しても論理的であること、がそれである。(略)その論理には高度の倫理が秘められている」と指摘する。創作過程を示す資料がその倫理観を能弁に物語っているように感じた。

(中野稔)

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