ソニー株が一時7%高 半導体復調、ゲームも好調
ソニーの株価が29日に一時、前日比7%高まで急伸し、約2カ月ぶりの高値をつけた。前日に発表した業績上方修正の中身が市場参加者に2つの驚きを与えた。収益の悪化が長引くとみられていた半導体事業で予想以上の黒字を確保。稼ぎ頭のゲーム事業でも利益規模が予想を超えた。
「国内外の多くの機関投資家は決算発表でネガティブな材料が出る可能性に備えて事前に持ち高を減らしていた。その懸念が払拭されて買い戻しに動いた投資家が多い」。ファイブスター投信投資顧問の大木昌光取締役運用部長は解説する。
市場が警戒していたのは半導体事業の底なしの収益悪化だった。ソニーは画像センサー(CMOS、相補性金属酸化膜半導体)で世界シェア5割を握るが、売上高の約2割は中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)向けとされる。
米国による禁輸措置を受けて同社向けの出荷を9月中旬以降停止。市場の一部には半導体事業の大幅な落ち込みを懸念する声もあった。ソニー株は8月につけた19年ぶり高値と比べて1割安い水準まで売られていた。
28日の発表によると同事業の営業利益は7~9月期に約500億円だった。21年3月期通期では66%減の810億円と、8月発表時の計画(45%減の1300億円)を下回るが、市場は収益悪化に歯止めがかかる兆しを読み取った。
決算説明会でソニーは収益回復時期について「23年3月期になる」(十時裕樹最高財務責任者)と予想。ファーウェイ以外の海外メーカー向けに汎用品の販売を拡大して補う計画を示した。
りそなアセットマネジメントの戸田浩司シニア・ファンド・マネージャーは「中長期的に半導体の需要が拡大する確度は高く、押し目買いの好機だった」と話す。ソニー株の売買代金は前日の3倍に膨らみ東証1部で首位となった。
さらに買いを加速させたのがエンタメ事業の成長。ゲーム、音楽、映画を合わせた通期の営業利益計画を890億円上積みすると公表したからだ。特に主力ゲーム機「プレイステーション(PS)4」のソフト販売や、継続課金型プラットフォーム上での楽曲配信が好調だった。
11月には新型ゲーム機「PS5」の発売を予定する。9月のPSユーザーの総プレイ時間は前年に比べ30%多いなど「巣ごもり」の追い風は継続している。SMBC日興証券の桂竜輔シニアアナリストは、「PS5や新型アイフォーンの堅調な販売動向が見えてから、本格的な成長期待への評価が始まるだろう」と話す。
エレクトロニクスや金融でも上方修正があったことなども寄与し、21年3月期通期の連結純利益は前期比37%増の8000億円と、従来予想(12%減の5100億円)から一転最終増益となる。